(1)
「そうだ、健一よ、お主服を変えてはどうだ?」
「え?臭い?」
「そうだな、臭いぞ?お主もだ、メェルよ」
「ひゃい?!臭い…ですか…。」
「女の子にそれは言っちゃいけないでしょ?!」
「いや、今言っておかねば後々困るのはお主らであろう?」
うん、一理どころか百理ぐらいある。でもなぁ…俺らって人間の姿をしているから、こっちで見かける服なんて買ってもサイズや寸法が合わない。さて、どうした物かな。作る…と言っても裁縫なんてやった事が無いし、軽鎧もあるじゃない。う~ん…難しい問題だ。風呂に入れば平気だと思ったんだけどなぁ…。
「うむ、これをやろう」
「どれ…なっ?!」
ハヤテは俺らに一着ずつ服を渡してくる。それは、真っ黒いスーツのような見た目をしている。メェルに渡されたのは、真っ黒いローブのようなワンピース。これでこの後戦うの?!無理じゃないか?クソ目立つじゃないか…。
「それは汚れを弾く加工と臭いが付かない加工を施してある。その上から鎧を…ぶふ…着れば良かろう…」
ハヤテは俺らに渡した物を見つめて、思わず吹き出す。ふざけんなぁぁぁぁ!!!!この上から鎧着るって、もはや何かのおふざけでしかないだろうが!!いや…それにしても…上等な布で出来ている気がするな。こんなの貰っていいのか?
「ああ、いいぞ?おぉ、メェルはもう着ているではないか?」
白銀の女の子が漆黒のワンピースに身を包まれている。めちゃくちゃ綺麗だ、ていうか…ペアルックみたいになってないか?いやぁ…めっちゃ高性能だからさ…着るよ。俺も着替えるために、酒を飲みほした。
「おぉ、似合っておるではないか?」
「そうかな?」
「執事…みたい…です…!」
「羊に似ているのが気に入った?」
「ダジャレを言い合っている場合ではないだろう?」
確かに、臭くない。それに、着心地がとてもいい。パジャマと同じぐらいの温度感で着ることが出来る。スーツという見た目なのに、部屋着としても使えるなんて…なんて優秀なんだ?!
「あ、ありがとう。」
「ありがとう…ございます…!」
「何、ちょっとした礼だ」
「あんなに立派な家を建てて貰ったのに?」
俺が、自分の席の反対側の景色に写る自分の家を見つめる。ハヤテは”それぐらいの事をしてもらったのだ、受け取れ。後、臭くて鼻がもげるのだ”と言った。
「失礼すぎるだろ?!」
「しょうがないではないか、今は臭いがしないな?」
「そりゃそうだ?!」
「ふふ…面白い…です…」
ハヤテとの会話を聞いて、メェルがすごい笑っている。なんだか、ハヤテと喋ると人を笑かすために話している気分になる。あぁ、本当に心の底から楽しんでいるよ。
「そうだ、明日旅立つのだろう?どこに行くかもう決めてあるのか?」
「それだ?!何も決まってない。」
「であろうな、だから決めておいてやったぞ?」
「なんでじゃい?!」
「がはは!良いではないか、明日詳細を話す。後、サプライズが一つあるだろうな」
その言葉に釣られるように、二階が激しく光り輝いた。敵襲か?!と思ったが、ハヤテの言葉を思い出す。もう、人間が通れることは無いと言う言葉を。ハヤテは”終わったか、では明日会うとしよう”と言い、解散になった。なんだ、明日会うって?まぁ、会うけど。
メェルと一緒に、何を言いたかったのか考えながら家に帰り、風呂に入ってベッドに入る。こことも、明日でお別れになるのか。いつ帰ってこれるかな………。
翌朝、何が行われるか分かってないまま、ハヤテの家を訪れる。ハヤテは”あぁ、来たのか。上がると良い”と言って案内してくれた。何だか、いつもと違う雰囲気を感じながら、御なじみの席に座った。ハヤテは俺らをにやにやしながら見ている。なんだっていうんだ?
「さぁ、出てくるが良いぞ」
「もう良いのですか?」
「父上、変だと思われないですか?」
「変だ、と言ったら我が叩く!」
「叩かれたら死んじゃうから?!って…誰の声?!」
ここはハヤテの家で…二人の幼竜が居て…もしかして、幼竜が?!こんなにしっかり喋れる子たちだったか?もしかして…すごい瞬間に立ち会ったか?二人は、恥ずかしそうに俺らの前に現れた。
片方は男の子。黒い髪をしていて、釣り目。鼻立ちは通っているクールでかっこいい印象、服装は真っ黒い着物。もう片方は真っ白い女の子。雪のような透明な肌、垂れた目と青い瞳、それに真っ白い綺麗なロングの髪。服装は真っ白い着物。可愛いけど雪女みたいな…印象。
「もしかして?!」
「そうだ、新竜になったのだ!それだけではないがな…!」
ハヤテが胸を反らして、我が子の成人を祝う親みたいな雰囲気を醸している。そうか、救えて…本当に良かった。ハヤテのこの満足そうな顔も、二人の可愛い顔も見ることが出来た。本当に…泣きそう…。
「色々思ってくれてありがとうございます、健一さん!」
白い女の子が抱き着いて来る。ぎゅっと力が入っていて…俺の…意識が落ちる!!!”ギブギブ!”と声を上げて、女の子の硬く結ばれた腕を叩く。白い女の子は”あら、ごめんなさい!”と言って離れる。俺は思い切り息を吸って、呼吸を整えた。
「挨拶を済ませた所で我が子らに名前を付けて欲しいのだ」
「俺が…名付け?!」




