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来世でも実況したいと願ったら"スキル実況"を獲得しました  作者: 鳶雫
一章 人間の領土~首都コルトランド~
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 大蛇の攻撃は頭を軸にしての噛みつき攻撃!どんなに蛇が早くてもこちらのサイドステップは超一流!なんといっても、世界の英次直伝のサイドステップだ!来る者を華麗に躱し、相手の急所に突きや斬撃をやりたい放題叩き込む!そんなスタイル!完璧な間合いを見極めることが出来ている!

 なんで俺はこんなに軽やかに動けるんだろうな。ただ、あいつの動きを…幼い時から見ていただけなのに。

「のろまめ、そんな攻撃当たるわけないだろうに?ただ、図体だけデカくなってしまったのかな?」

 オーキチ選手の煽りの言葉を理解しているのでしょうか、大蛇は地団太を踏んで悔しがっているようにも見えます、足はないはずなのに!大蛇は怒り狂って考えることが出来なくなった頭で手あたり次第周りを攻撃しております!これは、ラッキーともアンラッキーとも取れますね。いや、気づけば大蛇の顔が目の前まで迫っている!ギリギリの緊急回避!これで何回目でしょうか、しかし状況は不利!大蛇を見失ってしまった!

「くっ?!どこに行った?」

 平常心……平常心だ。常に冷静に対処すれば、どんな敵の攻撃すら見えてくる。あのデカい図体じゃ、上には行けない。ならば、横から顔を出すとかがだろうな……。ビンゴだ!

 横からの攻撃をひらりと躱し、目の前の首に向かって渾身の一撃ぃ!!!振り下ろした剣は見事に大蛇の首を斬り落としました!オーキチ選手は頭から血を被ってしまっていますが、生きているだけでも素晴らしい事でしょう!見事なジャイアントキリングです!誰が勝てると思ったでしょう、相手は二十メートルはある大蛇です!

「完璧に勝てて…良かった…。」

 実況はやはり面白い。本当なら……仲間とかを実況したい。英次と俺がそうであったように。今となってはどうする事も出来ないけどな。とりあえず…これを売りに行くか?しかし、こいつの討伐証明部位ってどこになるんだ?尻尾とか切ればいいのか?蛇の周囲をぐるりと回って、閃く。そうだ、カバンになんでも入るじゃないか。

 大蛇の死体をカバンに詰め込んで、森を出る。城門に着いた時、門番はぎょっとした顔で俺を見つめて立ち尽くした。あ、血を落としてくるのを忘れてしまった。しまったな、早くギルドに行ってしまおうか。王都の中を歩いている時、視線が刺さりまくっていて本当につらかったが、何とかギルドにたどり着くことが出来た。

「もう帰ってきたのですか?」

「え?早かったですか?」

 受付嬢は俺の姿を見かけるや否や、嫌な顔をしている。なんだ、そんなに露骨に嫌な顔をしなくてもいいだろうに。あ、血が付いているからか?

「えっと…ここで出したら倒壊してしまうかもしれないんですけど…?」

「はぁ、責任は問いませんので出してみてください」

 本当に…信用ないんだな。まぁ、いいや。”壊せるものなら壊してみろ”と言われている訳だろ?じゃあ、二十メートルアタックをかましてやろうか。ギルドの中がぐちゃぐちゃになっても俺は知らないからな。袋を地面に置いて、大蛇が出てくるように念じる。お姉さんの顔はみるみる内に青ざめて行った。

「ちょっ…?!」

「だから言ったじゃないですか、やばいですよ?って。」

「いや、だからって、こんな…?!」

 お姉さんはカウンターの奥の方に何か叫びながら走って行った。俺は一人だけ、ぐちゃぐちゃになった店内を見つめている。こいつは意外と大きくないのかもしれない、ギルドが全て壊れるかな、なんて考えていたから。おかしい、俺は悪くないはずなんだけど。少しだけ心配はしているけど。

俺の元に、ひげ面の偉そうなおじさんが代わりに出てくる。お姉さんは後ろからひょっこり顔を出しているだけだが、偉そうなおじさんは”うむ…これは…”とか言いながら大蛇を見つめている。これって、俺は疑われているのだろうか?こんな大蛇を一人で倒せるわけがないとか、市場で買ってきたのだろうとか。買い取ってくれればそれでいいよ。俺は損はしていないから。おじさんは見終わると、俺の方を向き直って口を開いた。

「どうやってこの魔物を倒したのかな?」

「え?普通に剣で切り落としましたけど」

「スキル持ちなのかね?」

「スキルは持ってますね」

「ほう、では何故ギルドに来たのだね?」

「何となく、ですかね?」

 明確にこれ、という理由はない。強いて言えば酒に釣られただけ。何も気にせずに酒を飲みたかった、ただそれだけ。なのに、路銀が無いから稼がないといけないし、酒は飲めないし、今こうして質問攻めにされている。

「君はこれがとんでもない事をした、という自覚はないのか。」

「はい、ないですね?なんですか?」

「奥で説明しよう、付いて来なさい」

 そういうと、カウンターの端っこの板を上にあげて、手招きされる。カウンターの端を通ると、裏にはまた広い廊下があって、応接室のような部屋へと通された。アンティークを基調とした部屋で、ゴージャスな雰囲気を醸し出している。贅沢な部屋、という印象だ。

 偉そうなおじさんが部屋に入ってすぐに、机を挟んで左手に腰かける。すると、おじさんは手を目の前に差し出して”座ってくれたまえ”と言った。遠慮なく座らせてもらう事にする。

「それで、この魔物は買い取りでいいのかね?」

「ええ、いいですけど」

「では、これで買い取りさせてもらおう」

「……はい?」

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