(1)
今すぐにでも飛び掛かって来そうな勢いの三人組を相手に、こちらには戦闘の意思がない事を伝えたい。どうやれば伝える事が出来るだろうか…。いや、しかし。この相手三人衆が竜人族であるとは限らない。いや、この作戦しかない!
俺は腰に下げている剣を掴む、そしてそのまま取りに行かなければならないような横道目掛けて投げ捨てた。三人衆は”やはりそう来るか”と構えた後、大口を開けてポカーンとしていた。それでいい、この状態であれば話を聞いてくれるだろうか。
「この状態なら話を聞いてくれますか?」
「いや、その状態でも暗器などを持つ事ぐらいは可能であろう?」
緑色の髪の毛の男が渋い声で俺に問いかける。そうかぁ…俺の無謀な賭けもここまでだったのかもしれない。両手を広げて、上を見上げる。さぁ、斬れ、と言わんばなかりの態勢を取った。
「やめてください!!」
甲高い怒気を含んだその声は、きっと俺の隣に居てくれたメェルの声だ。目を開けて前を見ると、メェルが俺の前に立ちはだかって、身を挺して守ってくれている。相手の三人衆はその様子にも驚いたみたいだ。
「な?!あの者は奴隷ではないと言うのか?!」
「兄者、あの者は一般的な人間とは違いますぞ?!」
「大兄者、俺もそう思うっす!」
緑の髪の男に対して、二人の男達が口々に言う。”他の人間”と言った、口ぶり的には…この三人衆は竜人族という認識で合っているだろう。ただ、ここまで警戒されている相手に竜人族が身を寄せている場所に案内してくれ、と言っても無理だよな。
俺は目の前に出て、身を挺して守ってくれたメェルの頭を優しく撫で”ありがとう”と言った。とは言った物の…どうやって俺は助けに来ました、なんて信じてもらうように仕向ける事が出来るだろうか?おっ?そうだ、領主の印を見せれば……?俺、受け取って無くないか?
「あぁぁぁぁ?!受け取ってないかも?!」
「何事だ?!まさか、攪乱作戦か?!」
緑の髪の男が臨戦態勢を取る。びっくりさせてしまったのは申し訳ないけど…今本当にそれどころではない!!ここから戻ったとして…また、この三人衆に会えるかどうかは分からない。それに、山を越える苦労もあるし…はぁ…俺のミスだなぁ。ここは素直に言うしかない、忘れ物をしました、と。手をぐっと握りこむ。すると、手の中に何か硬くて、チクチクした物がある。疑問に思って手を開いて、よく見るとそこには領主の顔を模したバッジが現れていた。
「ほう?それは、ドン・タイガー様の物か」
「そうですね、ドン・タイガーに言われてここに来ましたから」
「なるほど、作り物ではなさそうだな?」
「まぁ、領地で色々させてもらったので」
三人衆の顔色がみるみる明るくなる。しかし、三人で円陣を作ったかと思うと何やらこそこそと話し始めた。こっちには会話は聞こえないが、信じていいかどうかの会議をしているのだろう。すぐに信じろと言われても難しいとは思うが、ここは信じて欲しい。三人衆は円陣を崩して、俺の方を向き直った。
「失礼しました、私達はタタ、ツツ、トトと申します」
緑の髪の人がタタ、紫の髪の人がツツ、桃の髪をしているのがトト。多分だけど、兄弟なのだろう。名前の並び的にもそうだし、顔も似ている。着物の柄も同じだし、髪と着物の色だけが見事に違う色をしているだけなのだ。見れば見る程…ドッペルゲンガー的な印象を受ける。
「いえいえ、俺は小田健一と言います。」
「私は…メェル…です…」
タタが俺とメェルを見て感心したように頷いている。なんだろう、礼儀を重んじる文化でもあるのだろうか?喋り方も少し古風な喋り方というか…あまり聞かないような喋り方だ。
「ほう、これはご丁寧に。」
「兄者、どういう案件で来たのか聞かねばですぞ!」
真ん中のツツがタタに対して慌ててそう言った。そうか、お使いという所までしか説明してないからこの先を説明しようか。ついでに、問題を解決しに来た事も伝えなくては。
「そうですよね、一応この地との連絡が途絶えた事が気になる、と言われて来ましたが…何か問題が起きましたか?」
三兄弟は顔を見合わせて一斉に”はぁ…”とため息を吐いた。そこまで深刻な問題を抱えているのだろうか?まぁ、それは解決しなければいけないから…今はいいか。とりあえず案内をしてくれないだろうか?
「えっと…案内をしてくれたりはしませんか?」
「そうだったな!案内をしながらでも話は出来るな」
そう言って、三兄弟は手招きをしつつ歩き出した。俺らも見失わないように、サッと後を着いて行く。俺らが今まで通ったはずの道なのに、何故かこの三兄弟が歩くと道が現れているような、不思議な感覚に襲われた。




