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来世でも実況したいと願ったら"スキル実況"を獲得しました  作者: とびし
二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

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 パンパンになった腹を摩って、幸せを嚙みしめる。日本に慣れきっていて、幸せなんて感じることが出来ていなかった。平和な事も、食事が毎日食べられる事も、清潔な事も。どれ一つ、当たり前な事など無いんだ。風呂だってそうだ…公衆浴場なんてどこにもない…。

「はぁ…。」

「む?どうしたのだね?」

「いえ、風呂に入りたいな…と思いまして」

「風呂ならある、入ってくるといい」

 領主が風呂の位置を説明してくれる。まさか…風呂があるなんて?!獣人はもしかして…風呂好き?動物って体を綺麗にするのが好きなイメージが割とある。風呂が好き、とまでは行かなくとも、毛づくろいをしたりする事もあるだろう。毛づくろいはこの世界だと風呂になるのか?

「では…良いですか?」

「全然問題ない、メェル君も行きなさい」

「私も…ですか…?」

「一緒に入る事も出来るぞ?」

 メェル?一緒には入らないよ?性別が違うんだからね?分かってるよね?メェルは俺の訴えかけを察知したのか、黙って頷くだけだった。

 応接室を出て、外を確認する。すっかり日は沈んでいて、静かだ。獣人達は皆、ちゃんと帰ることが出来ただろうか。帰るべき場所はちゃんと残されていただろうか。今更助けられても、帰る場所なんて無いんだよ、と思われていないだろうか。とか余計な事を考えていたら風呂に着いていた。

 脱衣所の広さが、屋敷の大きさを物語っている。スーパー銭湯の脱衣所と同じぐらいの大きさをしている。そのまま、目の前に見える扉をくぐると、石造りの大きなお風呂が見えた。溜められているのはきっと水ではない、湯気が出ているのだから。両端で虎が水を吹いている…これは領主の趣味なのだろうか。

「うわぁ…気持ちいぃぃぃ。」

 久しぶりの風呂。大きくゆったりした風呂に肩まで浸かる。お湯が染み渡るみたいだ。こんなにでかい風呂に入れる、更に独り占めできるなんて…幸せなんだ、これ。

 幸せを噛みしめながら、風呂でうとうとし始めてしまった。まずい、このままだと寝てしまう。頭をぶんぶん振って眠気を耐える。俺の奇行を誰かが見ていたのか、後ろからパタパタと足音が聞こえて来た。いや、待て?俺一人しか入ってなかったはず…。まさか、幽霊か?後ろを一気に振り返る!

 立っていたのはメェルだった。何でじゃい?!俺、言わなかったっけ?!ちが、じゃなくて?!タオルも何もしてないし?!まずい、見ちゃだめだ!顔を背けて、そっぽを向いた。

「入ってきちゃったの?!」

「だって…目配せしてました…」

「あれ、目配せじゃなくて、入っちゃ駄目!って事だったんだよ?!」

 メェルは少し考えてから”あぁ…そうだったんですか…?”と分かったような分かってないような声を上げた。なんでも分かるような関係になったと思ったけど、伝わらない事もあるんだ。今度からはしっかりと言葉で伝える事にしよう…。

「俺はもう…上がるね?」

「え…もう…ですか?」

「だって、ずっと入ってたからさ?」

「分かり…ました…」

 メェルの声は寂しそうだった。仕方無いんだよ…嫌な訳じゃ無いんだけど、流石に裸はだめだと思う。ん…?待てよ?携帯変化して、毛でモフモフになれば行けるのでは?

「メェル?もしかして形態変化しても入ってられる?」

「はい…できますけど…」

「じゃあ、それで一緒に入ってられるよ!」

「分かり…ました…!」

 メェルは少しだけ上ずった声を上げて、形態変化をした。ふわふわの毛でメェルが覆われる。大丈夫だ、ちゃんと全て隠れている。いやぁ…良かった…じゃなくて!俺が隠れてないじゃん?!手で隠しておくか…。

「所で何を話すのがいいんだろうね?」

「はい…分からないです…」

 無言で二人で風呂に浸かっている。気を使って話をすることも無く、ただただ、時間が過ぎていく。まぁ…こんな風呂もいいのかもしれないな。しばらく無言で一緒に風呂に入った後、俺が先に風呂から上がった。

 応接室では、領主がただ一人で酒を飲んでいた。俺の方に気づくと酒を手渡してくる。酒を受け取って、真正面に座って酒を身体に流し込んだ。風呂上がりの酒は格別にうまい、と感じた。

「人間のスキル持ちって…実は弱いですか?」

「何故そう思ったのだね?」

「戦場で出会った奴らがそこまで強くなかったからです」

 領主は首を傾げて顎に手をやる。この反応をしているという事は、弱いなんてことはあり得ないのだろう。特に、コルトランドが積極的に抱えたがっているのもある。ひとしきり考えた後に、領主が俺の顔を見て”あぁ”と納得した声を上げた。

「そうだ、健一君が強すぎる、という可能性を失念していた」

「えぇ?普通というか、一般というか、一般より少し弱い…かな?」

「だったら、人間の軍勢相手に二人だけでは突っ込まないだろう?」

「強い、とは思ってないですけど…魔物と同じレベルなのであれば倒せるかと?」

「人間のスキル持ち、しかも軍に所属している人はそもそも、魔物よりも強い。」

 え?そうなの?じゃあ…俺が強いのはきっと、英次と青年のおかげなのだろうな。

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