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受付で鍵を返して、二人でギルドへ向かう。今朝のギルドは何故か賑わっていて、がやがやしている。ボードの前に立って依頼を確認する。昨日のヒョウオクターを倒した件については認定されているが、ゴールドクラスにに上がった訳では無かった。今回もシルバークラスの魔物を探す。ふと、目に留まった魔物を見つめる。
こいつ…カモノハシに似ているな。カモノハシと言えば、毒爪を持った哺乳類なんだっけか、卵を産む事でも有名じゃなかったっけ?実際にカモノハシを見た事は無いんだけど…結構可愛い顔をしてるから騙されてしまうよなぁ。
「これにしようか?」
「はい…なんでも…大丈夫です…!」
「本当に?なんでも?」
「あ…あんまり…高クラスでなければ…です…」
メェルがぷいっと顔をそっぽに向ける。いじめたくてやった訳ではないんだけどなぁ…ただ、俺との戦闘に慣れて欲しいから。今後、魔物とは比べ物にならないぐらいの相手と戦わなくてはならないかもしれない。例えば…人間とか。今は考えなくてもいいか。依頼を掴んで、オリーの元に顔を出した。
「これで、頼めますか?」
「はい、カモリーノですね?」
「カモリーノ…。」
顔も可愛ければ名前も可愛いのか。この世界の名前って面白いのばかりだよな。ヒョウオクターとかタコパスとか…終いにはカモリーノ。リーノはどこから付けられたの?カモの傍でウロチョロしてたリーノが急に”一緒になろう?!”と言って飛び掛かったのだろうか。そんなことはどうでもいいか。
「では、受注しましたので」
「なんか、あんまり機嫌がよろしくないですか?」
「そんなことはありません、早く行ってください、お気をつけて」
オリーはいつもの笑顔とは裏腹に、機械的な口調で俺らを見送る。何か機嫌を損ねるような事をしてしまったかな?あんまり感情の機微には鋭くなくて…分からないなぁ。
メェルを連れて、カモリーノが生息しているという森の中の河原に行く。眼前に広がった河原はそこだけ森林をくりぬいて、綺麗な水を流したような人工的だけど美しい姿をしている。カモリーノがどれぐらいの大きさなのか分からないけど、この世界の事だ、きっと大きいのだろう。大きいのだとすれば…ここには生息していないはずだ。何故なら、水深が浅そうに見えるから。
「ここじゃなさそうじゃない?」
「分からない…です…」
「う~ん…何処から現れるかな?待ってみるか」
二人で河原の大きな石に腰を下ろして、辺りを見張る。特に、これといった事も起こらずに、ただ、時間だけが過ぎていく。おかしいな、ここは静かすぎる。居るはずなんだ、巨大な生物が縄張りとしているなら、この妙な静けさも分かる。という事は俺たちはテリトリーに居る訳で…まさか?
後ろからのこんにちは!まさか、魔物に知性があると言うのか!!オーキチ選手の鋭い感覚が警鐘を鳴らしていて、助かりました!カモリーノは鋭い爪でオーキチ選手を背後から先制攻撃!違和感に気づき、剣を抜いていりました!これでも剣士の端くれですからね!剣で受け止めると、即座にカモリーノは後ろに後退します!
「まさか奇襲を仕掛けてくるとは…」
「びっくり…しました…」
「気配を消すのはかなり得意みたいだ」
巨大な気配を消しています!まるでここは自分の庭だ、と主張しているかのようです!何故消えているように見えるか、一目見て気づきましたが、カモリーノは保護色で景色と溶け込んでいます!これはホラーディアと同じ手口なのでしょう!ここで何人も犠牲になってしまっているかもしれません!
「来ます…前…です…!」
鋭い金属音が響き渡ります!オーキチ選手の前にメェル選手が立ちはだかる!自分よりも大きな金属の盾を構えて、”絶対守る!”と言わんばかり、勇ましい姿をしています!しかし、メェル選手にとっても、オーキチ選手にとってもかなり不利な相手でしょう!羊は視野が広いが、奥行を認識できない!相手は素早い移動でこちらを翻弄してきます!
「マジか…これ、シルバーランクなの?」
「はい…シルバーランクは…とても強い…です…!」
メェル選手はもう一度、目を凝らし盾を構える!しかし、狙ってくるは…後ろ!また背後に回ってきています!今度は毒爪でオーキチ選手を葬る作戦!オーキチ選手は堪らず剣を振りかざす!毒爪を弾きました、こちらは二撃目の準備が完了している…今がチャンスだ…ここで一閃!!なんと?!カモリーノは空中に居たはずなのに、宙を蹴る!二段ジャンプを華麗に見せつけてきます!
「なんだありゃ?!」
「初めて…見ました…」
「うわぁ…これ、どうするか…。」
ビュンビュンと飛び回るカモリーノはまるで羽が生えているかのようです!さぁ、次の一手が来る、今までの傾向であれば…もう一度背後!!!決まった、しかし傷が浅い!カモリーノは苦痛で少しばかり顔を歪めます!鮮血がカモリーノへの道しるべ!ここから先はこちらの有利!やっと相手を視認できます!
「さぁ、ここからは俺らの有利だ」
「はい…頑張ります…!」




