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来世でも実況したいと願ったら"スキル実況"を獲得しました  作者: とびし
二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

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四話 初めての仲間

 タコ焼きを食べ終えて、一服しているとメェルが傍に歩いてくる。何か大事な用事があるのか、酷く緊張しているように見える。俺がそんなに怖いように見えるだろうか。疑問に思っていると、メェルが重たい口を開いた。

「私…戦闘中に…パニックを起こしてしまうんです…」

「……。」

 パニックは命取りになりかねない、というより致命的な物だ。もし仮に、ヒョウオクターのような魔物に遭遇してしまった場合。嬲り殺されるのをただただ待つしかなくなってしまう。しかし、前衛である以上、前に出るしか活躍の方法はない。これを打ち明けてくれたと言う事はどういう事か。

「それは、かなり深刻な事だよね?」

「はい…そうです…」

「それでも狩人をやっているのは何でなの?」

「私には…両親が…居なくて…。」

 メェルはまた涙を浮かべて呟いた。ぽつりぽつりとメェルが自分の過去を話し始める。

 まだ幼かった時、両親は家を出て行った。なんで出て行ったか…それは子供にプレゼントを買ってあげるため、誕生日プレゼントだった。”いい子にして待っていてね”と両親から話しかけられたのを最後に、両親は消息を絶った。獣人領土や亜人領土ではよくある事なのだが、人間が奴隷にして連れ去ってしまう。

 羊の獣人という特性があるため、仲間に見捨てられたというショックから、パニックを引き起こすようになってしまった。だから、狩人になった。今でもその症状に苦しめられていて、生活は出来るが、決して裕福な暮らしではない、という。俺は歯を食いしばりながら聞いていた、俺の歯が軋み、口から血が出る程。

「あの…血が…」

「良いんだ、こんなのは…!!!」

 怒り、焦燥感、呆れ…感情のループを起こす。俺の中に渦巻く感情は邪悪な何かを呼び起こす。”滅ぼしてしまおうか”そんな言葉が聞こえてくる。ただ、目の前の少女は、そんな俺に怯える事は無く、ぎゅっと抱き着いてくる。いつの間にか感情は消え去り、光が俺を照らしてくれるような、温かさを感じた。

「ごめん、俺はどうかしてたかもしれない」

「顔が…怖くて…」

 メェルは俺の鎧に顔を埋めて、決して俺の顔を見ない。今は大丈夫だから、顔を上げてよ。胸元にある、少女の頭を撫でる。俺はきっと、この子を守ってあげる事が役目でもある、そう感じる。俺たち……人間の所為で、この子の幸せが消えてしまったのだから。でも、俺にはそんな資格があるのだろうか。

 そうか、俺の事も話してみようか。メェルが話してくれたこの話には…意味があるから。

「俺はさ、コルトランドを追われたんだ。」

「な…なんで…ですか…?」

「人間を信じる事が出来なかったから。」

「……?」

 メェルは俺の胸元で首を傾げている。俺の話をしようか、この辺りで。その上で…メェルが良ければ仲間になってもらおう。この子を傍で守ることが出来るように。

 すべてを話し終えると、何故かメェルが涙している。俺の話のどこかに感動要素があっただろうか?英次の話や異世界から来た話はしていないのだけど。

「私は…健一さんの…盾になります…!」

「え?!話を聞いてた??俺…お尋ね者だよ?」

「私も…何処にも…居場所はありません…」

「はは、似た者同士なんだ?」

 俺の胸元から少しだけ離れて目を赤く腫らして、まるでウサギのようになっているメェルを慰める。いや、慰められているのは俺なのかもしれない。あぁ…この感情が、仲間になりたい、という感情なのかもしれない。

「今日からよろしくね、メェル」

「はい…頑張ります…!!」

 メェルは目を擦って、俺の握手を受け取る。会ったばっかりなのに、こんなにも絆が深まるなんて思っても見なかった。本当に…この世界に連れてきてくれてありがとうな、英次。人間の女の子に見える、獣人の女の子が仲間になったぞ?見てるか?お前、面白がって笑い転げてないだろうな?

「それにしても…疲れたね?」

「はい…日が…傾いてます…」

「俺…宿無しなんだけど、いい宿知ってるかな?」

「あ…あります…!」

 メェルが指さす方向を見る。ギルドの調理場からでも見える”それ”は、大きくそびえ立っている塔。メェルは…あれに住んでいるのか?あれって…マンションとかそういう類の物なのか?メェルはそんな俺の考えなどお構いなしに、俺の手を引いて連れて行ってくれる。市街地を抜けて、塔の根元まで。

 根本から見上げる塔は、赤いレンガ造りで鉛筆のような形。綺麗な作りをしているけれど、何かの拍子で崩れてしまわないか心配だ。俺は、メェルに促されるまま、宿と言われているその塔に足を踏み入れた。中は綺麗に整っていて、絨毯が敷かれていて、カウンターがある。その両脇に螺旋階段が二つあり、それぞれが交差している。

 俺が感動して上を見上げているのに、メェルはそのまま引っ張って行って、カウンターに居た猿の獣人のに話しかける。

「あの…帰りました…」

「あっ?!お帰りなさい…!では、この鍵を。お部屋は三階の305号室です!」

 そう言うと、勝手に鍵を渡されて、右手の階段を指さされる。なんなんだ?なんかこう…察しました、みたいな感じだったけど?メェルを見ると、メェルも別に特段変わらない表情をしている。二人で右手の階段を上って、三階の部屋へとたどり着く。待て、そういえば、鍵を一つしかもらってない。

「メェル、自分の部屋の鍵は持ってる?」

「健一さんの…それが…私の部屋の…鍵です…」

 あの受付めぇぇぇぇぇぇ!!!ウキウキしてやがったな?!猿の獣人だけに?!

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