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来世でも実況したいと願ったら"スキル実況"を獲得しました  作者: とびし
二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

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(4)

 さて、氷の露天を探すぞ、と息巻いて早数時間。途方もなく歩き回り、ただ時間を消費するだけで終わっていた。おかしい、露天であれば、大半は大通りに出ているはずなのに。

「それで、どこにあるかな?」

「分からない…です…」

「こんなに探しても見つからないとか、幻の店だったのかもしれない!」

「諦めちゃ…駄目です…。」

 二人して、路地裏で立ち尽くす。ふと、上を見上げると看板が目に入る。そう、看板は出ているんだけどねぇ…。だって俺は、この世界の人間じゃ……な…?ちらりと隣に居るメェルを見る。メェルも俺を見返して来て、首を傾げた。なんだ、この世界の住人がいるじゃん。

「あれ?なんで読めるのに見つからないんだ?」

「分からない…です…。」

「いやぁ、分からん。」

 一生路地裏から出られない訳だ。いや、正確には出ているんだけど、探しても探してもどこにも見当たらない。溜息を吐いて、肩を落とす。どこかに救世主は居ないだろうか?

 何やらさっきから、後方で聞きなれない音がする。というか、すぐ後ろまで迫っているような…?後ろを振り返ると、見事なまでに完成された魚の獣人が立っていた。口をパクパクさせているが、何を話しているか、は分からない。様子を悟ったのか、魚の獣人は点字版を取り出した。

「あ、点字版だ!もう、製品になっているのか!」

「点字版…?これ…ですか…?」

「そう、これ。ギルドの人と作ったんだ」

「すごい…です…意思疎通が…できます…!」

 メェルが”ふんふん”と言いながら頷いている。メェルが俺の方を向いて”氷の場所…知っている…そうです…”と言った。お手柄だ!俺一人だけじゃこうはならなかった!そこに案内してもらえるようにお願いしよう。

「教えてもらえますか?」

 魚の獣人は頷いて、手招きをしている。良い事すると、良い事が返ってくるんだな。俺が点字版のアイデアをオリーに渡さなければこの出会いは生まれなかった。オリーにも、魚の獣人にも感謝を伝えたい、ありがとう。俺らの居た路地から、違う路地を通っていく。どうやら大通りの方は通らないらしい。

 急に俺の前で止まるから、目の前の魚の獣人にぶつかりそうになり、必死に手をわたわたさせてしまった。なんだ、もう着いたのか…?って、ここなの?普通に路地裏というか…なんというか店の感じがしないけど。魚の獣人は裏口の扉をコンコンと叩いている、すると奥から犬の獣人が出てきた。

「どうしたの?さっき来たばかりなのに…ってお客さんを連れてきてくれたの?」

 魚の獣人は点字版を犬の獣人に見せている。納得したのか、二人とも頷きあって、魚の獣人はその場を後にする。”ありがとうございます”と声を掛けると、手をひらひらと振ってそのまま大通りの中へ溶け込んでいった。

「それで、どうしたのかしら?」

「えっと。氷が欲しいんですよ」

「あら?珍しいわね?人間が氷を欲しがるなんて」

「ええ、少し…アイデアがありまして」

 店主は物珍しそうに、俺を頭の先から足の先まで見ている。すると、途端に手を打って”ああ、貴方が噂の?”と言った。噂の?噂になるような事をしたか?噂になるような事…もしかして、俺がメェルを連れている事に対して何か偏見が?

「点字版は有難い発明よ?」

「そ、そっちか。良かったです」

「そうだ!氷だったわね?こちらにいらっしゃいな?」

 店主の手招きによって、裏口から中に入る。中はひんやりと涼しくて、もし仮に夏場でも快適に過ごせそうな温度をしている。ただ、底冷えがすごい。下を見ると、そこには地下へと続くであろう階段とそれを閉じている扉が存在していた。

 地下へと潜ると、徐々に温度が下がっていく。終いには氷点下を割っているぐらいの温度感になっていた。メェルも店主も全く意に介さない感じだ。俺だけがくがく震えているのだが、ここは平静を保つ訓練とでも思っておく。

「ここから切り出して頂戴?」

 目の前には、氷塊がある。それも、かなり大きい。天井から下まで、三メートル程度はありそうだ。

「分かりました、じゃあ、加工もして一気に持っていきます」

「”加工”をする?」

 さぁさぁ、観客の皆さんはお立合い!ここで発動しますのは、オーキチ選手の伝家の宝刀、スキル実況!目の前の大きな氷に切りかかる!丁度冷蔵庫程度に切り分けられましたのは、一生溶けない氷です!上蓋の部分を切り離し、中をガンガン突いて行く!丁寧な仕事を要求されています!あっという間に冷蔵庫の完成です!しかし、これでは冷凍庫に近い物が出来てしまったが、良いのでしょうか?!

 いいんだよ、それで。店主の顔は驚きのあまり固まっている。まるで冷凍されてしまったかのような。首を振って、現世に帰ってこれたみたいだ。”な、何をしたの?”という驚きの声が漏れていた。

「終わりました、これが冷蔵庫ですね」

「何に使うのかしら?」

「食材の保管ですよ?おひとつ要りますか?」

 店主は喜んで、お代を割り引いてくれたし、氷を持たせてくれた。二セット目を作り終えて、外に出る。先ほどの牛の店主が居た露天の傍に。すると、牛の店主が目を丸くして、”そいつはなんだ?!”と騒ぎ立てる。待て待て、落ち着いてくれ!冷蔵庫の用途を説明すると、牛の店主は喜んでいた。まぁ…塩漬け肉の必要性が無くなってしまったけど、それはそれでいいか。

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