表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来世でも実況したいと願ったら"スキル実況"を獲得しました  作者: とびし
二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/123

(3)

 牛の顔をした獣人の店主はニコニコしながら答えてくれる。手元を見れば、何かを大鍋を使って煮込んでいる、そう、肉の体裁を保った何か…。相当臭いがきつい、ハーブとか香辛料とか奥から漂う腐敗臭も相まって、吐き気を催す臭いがしている。料理をしているとはとても思えない。

 さて、どのようにして会話を成立させようか…。俺の様子を見て、店主はどんどん怪訝な顔に染まっていく。

「肉の鮮度をどうにかしようとした事はありますか?」

「なんだ?喧嘩売りにきたってぇのか?」

「いえそうでは無くて…ただ、お腹を壊す獣人が多数出ると聞きましたので」

 店主が俺の顔を見て口を開けて、目を丸くする。もしかしたら、コルトランドと手を組んで領民を脅かしているかもしれない、と考えたが…この表情からはそんな思考は読み取ることは出来ない。寧ろ、”気にしてくれているのか?”みたいな驚き方だ。

「した事はあるんだが…何しろどうすればいいか分からなくてな?」

「と言いますと?」

「俺らは飯を食えればそれでいいんだ、わざわざ手間をかけなくてもいいだろう?」

 牛の獣人は首を傾げて、にやりと笑った。まぁ…そうかな、実際胃酸のおかげで人間なんかと比べ物にならないぐらいの耐性を持っていると思う。それに、そういう知識が無くてもおかしくはない、だって食えるから。

「改善をしようと思いますか?」

「あぁん?出来ればしたい、とは思うがな?」

「では、塩漬けという方法を試してみませんか?」

「塩漬けだ?」

 牛の獣人は”なんだそれ?”と呟くと、そのまま動かなくなってしまった。今すぐに実演出来るが、今すぐに完成できる物ではない。数日は漬けておく必要があるし、食材そのものから水分を抜いてあげる必要がある。食材というのは中の水分が腐敗をもたらしてしまうから、それを抜く。簡単な話なのだ。

「今、新鮮なお肉はありますか?」

「あぁ…今朝仕入れた奴があるんじゃねぇか?」

 店主は頭を蹄でぼりぼりと掻いて、露天の奥へ入っていく。俺はその後に着いて行く。露天の後ろの方は蛇口とシンクがあって、他に机があり食材を保管できるスペースになっていた。そこには、わんさか肉が転がっているが、とんでもない臭いを発している。ここまでくるとどうしようもないのだが。

「あった、これだ!」

「うわっと?!」

 店主が俺の方に肉を放る。何とか落とさないようにキャッチ出来た。それを、シンクの中に置く。塊肉を数個置いて、置いてあった塩をドサッと振りかける。店主の顔が少しばかり動いた事が気になったが、とりあえずこれで下処理は完了した。

「これで数日放置ですね」

「な、これだけか?」

「一応、塩を何回か変える必要はありますけど、数日でカチカチになるはずなので」

「カチカチの肉なんてどうやって食うんだよ?」

「それは、次の工程なんですよ」

 店主に塩抜きの工程も説明する。水に漬けておくことによって塩を抜く。塩を抜いた後に、周りの色が変わっている部分の肉をこそぎ落として、中身だけを食べる。これでも、二週間程度がギリギリ。冷蔵庫があったとしても…一か月程度で食べきってしまった方がいい。

 店主が涙を流して感謝を伝えてくる。獣人は皆…感情が豊で本気で喜んでくれるみたいで…なんだかこっちまで嬉しくなってくる。イトベリアの皆とは、気が合うのかもしれないな。店主に手を握られて、どうすればいいか分からず辺りをキョロキョロしてしまう。やっぱ…冷蔵庫みたいな物は無いよな。

「常温保管じゃ無くなるようにする事は可能ですか?」

「いやぁ…聞いたことねぇな?」

 店主が首を捻って答える。やっぱり無いか…。もし仮に、氷なんかがあれば…多少はマシになるだろうけど。この領地の体感温度はそこまで高いものではない。とは言え、剥きだしのまま氷を出していたりしたら流石に溶けて無くなってしまうかな。もう少し、改善してあげたい所ではあるけど…。

 後ろから”あります…”と声が聞こえる。メェルを置き去りに話を進めてしまった自分を少しだけ咎めて、後方に居るメェルを向き直る。

「ごめんごめん、なんて?」

「聞いたこと…あります…」

「ん?何を?」

「常温で…保管しない…方法です…」

「マジか?!」

 メェルが俺の少しばかり大きな声にビクッと体を震わせた後、真剣に目を見つめてきて頷く。こんな所に、解決の糸口があったなんて…この子はちゃんと情報収集も出来るのか。偉い子だなぁ。

「どういう方法なの?」

「氷を…売っている…所です…」

「あぁ、なるほど」

「氷は…溶けません…」

「なんて?」

 メェルは首を傾げて同じことを二度呟く。え?俺の認識と違うな?氷は溶けない?そんな馬鹿な事があるか?そんな魔法の氷があるなら酒に…っと。違う違う、冷蔵庫というか冷凍庫になるか?うってつけじゃないか!

「どんな氷なの?」

「聞いた話…ですけど…」

 メェルの話によれば、ここから北に行った所に大きな山脈があって、そこに大きな氷があるらしい。この街でも売っているようで、なんでもずっと溶けないのだとか。この際、凍っているのだから衛生面は考慮しない、としても…お手柄だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ