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来世でも実況したいと願ったら"スキル実況"を獲得しました  作者: とびし
二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

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(1)

 場所を変えて、今度はギルドの中へ。机を丸々一つ貸し切りにして、机の上で必死に作業をする。紙は高いし、嗜好品としての価値があるため大衆受けはしないと聞いた。なので、木の板に、文字を彫っていく。その様子を俺はただ、見守る事しか出来ないのだが。

「そういえば、何故領主様に会いたいのですか?」

 ウサギの獣人は作業をしつつ、俺を見ずに話を振ってくる。これは、ちゃんとした理由を答えるべきなのだろうか。俺のやりたい事と、請け負った思いの事を。果たして今日会ったばかりの受付の子は信じてくれるのだろうか。

「平和にしたいんです、世の中を」

「うわぁ?!素敵ですね!!」

「へ?」

「いつもドン・タイガー様もおっしゃられていますよ?」

 ウサギの獣人はいつの間にか俺の方をじっと見つめていた。ここの領主は本気でそれを実現出来ると思っているのか。この領民にして、領主あり、か。素晴らしいな、コルトランドとは大違いだ。

「ふふふ、いいですね!あなたもそういう考えなら、信用できますよ!このアイデアも成功します!」

 ウキウキなモフモフを前にして、一つの欲が浮かび上がる。この子を撫でたい、そんな欲望。しかし、本当に今日会ったばかりなのだ、そんな事をしていいはずが…ない。

 気づけば頭をモフモフ撫でていた。ふわふわな毛に、大きな耳。温かい…生きている事を実感できるなぁ。いつの間にかぐりぐりしていたみたいで、気づけばウサギの獣人は目を細めて気持ちよさそうにしていた。はっ?!まずいまずい、作業の邪魔をしてしまった。手を離せば、心細そうに”あっ…”と声を漏らしていた。

「出来ました!」

「うぉぁ?!」

 頭なでなで事件から暇になってしまい、うとうとしてしまっていたみたいだ。目の前には、大量の木の板が積み上げられている。よく見ると、この領地の看板に書いてある文字と同じ形をした物が彫られている。すごいな、これ全部この短時間で完成させたのか。

「よし、これで行けますかね?」

「呼んでみましょう!友達が居ますので!」

 ウサギの獣人は席を立って、カウンターの奥へと走っていく。その後ろ姿は凄く嬉しそうで、見ているこっちまで嬉しさが伝わるような感じがする。体感一分ぐらいだろうか、ウサギの獣人の後ろには、手が触手の巻貝を被った二足歩行の獣人が連れられてきた。

「これ、分かる?」

「……。」

 意図は伝わっているみたいで、巻貝の獣人は触手で木の板にさわさわと触れている。一つの板に触れた後、全ての板を触って、木の板を並べ始める。五十音順に並べているのかと思ったが、ウサギの獣人が巻貝の獣人に抱き着いている。これはきっと、意志疎通が成功した証なのだろうな。

「成功しましたか?」

「はい!ありがとうございます!これ、広めてもいいですか?」

「ええ、もっと喜んでくれる人が増えるのなら!」

 ウサギの獣人が嬉しそうに”やった!”と声を上げてもう一度作業に取り掛かる。その隣で、俺と巻貝の獣人は見守る。なんだか、この席を離れる事が出来ない雰囲気を感じたからそこに座っていたが、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。

「で、出来た!!!」

「んがぁ?!」

 俺の隣で飛び跳ねるウサギの獣人。徹夜してまで仕上げたのか?というか…何セットあるんだこれ?もしかして、もっと必要なのか?手伝って上げられれば良かったんだけど…俺はこの世界の文字が読めないし書けないからなぁ…。

「おめでとうございます」

「やりました!友人に配れるだけの数は出来ました!」

「ん?もしかして…もっと数多くいたり…?」

「ええ、結構いると思いますけど…この領地に居る全員に三種の皆に配るならこれじゃ足りないですね?」

「マジですか…。」

「まだまだ頑張りますよ、ね、健一さん!」

「え…?何で名前を?」

「さっき見せてもらったじゃないですか?私の名前は…」

 ウサギの獣人は俺の耳元まで来てこそっと”私はオリー”ですよと囁く。なんで囁く必要があったのかは分からないけど、何か意味があるんだろうな。多分、名前を知られてはいけない、とか?

「私は尊敬した人にしか名前を明かしませんから!」

 そう言ってオリーは奥に帰って行った。むむむ…そうか、そういう、ね。こっちに来てから初めて好意を受け取った相手は…獣人か。これは、俺の望んだとおりの展開ではあるんだろうな。あぁ、誰かの役に立つことがこんなにも嬉しい事だと思わなかった。

「俺も行きますか…。」

 まだ眠い目を擦って、ギルドを後にする。まだまだ他にも手伝う事があるかもしれない。色々な場所を見て、探して、領主に会うための足掛かりにしていこう。と思ったら、ギルドの前でばったりと昨日の女の子に出会う。朝日に照らされて銀色の髪は一層美しくゆらゆらと揺れている。

「あ、昨日の」

「は…はい…」

 もじもじしながら俯いている女の子を見る。俺よりも身長が低いから、俯かれると顔が見えない。ただ、昨日よりも怯えていないような気はする。

「昨日はありがとうございます、俺の名前は小田健一です」

「私は…メェル…です…」

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