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なんで迷ったかって?同じ建物、同じような道…。目印が何一つもない、土地勘もゼロ。迷わない方がおかしくない?さっきから同じような場所をぐるぐると回っている感じがするんだ。てか、こっちの世界に来てから迷ってばっかりじゃないか?本当に…。
「はぁ…。」
ふと、顔を上げれば、自分より大きな盾を身に着けた少女を発見する。綺麗な真っ白い髪をしていて、ゆるふわなパーマの女の子。あの子はどこに向かうんだろうな?でもなんだかおどおどしているし、声を掛けない方がいいか。もう一回行くぞ!
どれぐらいの時間彷徨ったか分からない。もうなんだか夕暮れになりかけている気がする。というか、夕暮れ。視界がオレンジ色に染まっているから。ぐぁぁぁ!!!文字も読めないし、看板に何が書いてあるかも分からない!ミミズが暴れまわったような字と何を意味しているか分からない絵。なんだよ、これ。
「もう、意味が分からん!!」
「ぴゃっ?!」
「あ、ごめんなさい…ん?」
目の前を歩いていた人を驚かせてしまった、と思って謝った。その子は一度会った女の子だった。大きな盾を持ったゆるふわパーマの女の子。というか、この子は何故顔が人間なんだ?そんなことは今はどうでもいい、この際驚かせてしまったのだから……聞こう。驚かせたから聞くってなんだよな。
「あの、良ければ道を聞きたいのですが」
「は、は、は、はい…」
「そんなにおどおどしなくても…あ」
そうか、獣人からすれば人間は身内や仲間を攫って行く存在でもあるのか。俺は本当に気が利かない…。こんなに小さい子を怖がらせてしまった挙句、気が利かないなんて。この子を怖がらせないようにするためには…動物相手だと、どうすればいいんだ?目を合わせるのは怖いか?
片膝をついて、目線を低くする。顔を覗き込むようにして、怖がらせないように細心の注意を払う。二度も目の前を通ってくれたこの奇跡を逃すわけにはいかない。
「ギルドの場所を教えてくれないですか?」
「あ…はい…大丈夫…です。」
女の子は”こっち…です…”と手招きをして先頭を歩いてくれる。良かった、これで一安心だ。ギルドに着いたら情報収集をして、あ、ギルドの中で困っている事がないか、とか確認出来ればそれもいいか。しかし…困っている事か、一人じゃ勝てない魔物とか狩れって言われても無理かもな。
女の子が不意に立ち止まる。目の前を見て見ると、一つだけ街のはずれにある建物に到着していた。”ここ…です…”と言いながら入っていく女の子。俺も恐る恐る入ると、明りが灯っていて、何個も切り株が並んでいる。獣人達は切り株を椅子と机代わりにそこで宴を開いていた。間違った場所…ではないよな?
奥に見えるカウンターには、ウサギの獣人が居る。ウサギの獣人は俺をちらりと横目で見ると”あら、いらっしゃいませ!”と言い、頭を下げた。
「あの、ここはギルドですか?」
「はい!そうですよ?本日はどのようなご用件ですか?」
「えっと、登録って必要ですか?」
「登録は絶対必須です!!」
ウサギの獣人は俺の手を必死に握る。ふわふわな手に包まれてひと時の幸せを感じる。違う違う、幸せを感じているじゃなくて。
「あ、登録はしているんです、コルトランドで」
「ほっ…そういう事でしたか!でしたら説明だけさせていただいても?」
そう言うと、カウンターからスキップのような歩き方で外に出てくる。そういえば大きくないか?これ、動物たちの特徴そのままに大きくしたって事か?人間って勝ち目あるの?動物たちの身体能力ってかなりすごいはずなんだけど。放っておいても勝手にコルトランドが敗戦して終わるんじゃないか?
「では、説明させていただきます!」
説明を聞くに、イトベリアではハンターではなく狩人と呼ばれていて、クラスが存在する。カッパー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナで、一番上がプラチナ。最初は誰しもがカッパーからのスタート。俺のクラスも当然カッパーという事になる。ウサギの獣人は移動して、大きなコルクボードの前に移動する。
「こちらが狩猟ボードです!」
大きなコルクのボードに魔物のイラスト付きで手配書のようにびっしり並んでいる。上には対応する狩人のランク、下には報酬が書かれている。クエストを受けて、対応する魔物を狩猟する。狩猟した魔物の買い取りと報酬金額の贈呈が基本的な流れとなる。そういえば隣の女の子は…どこのクラスなんだろう?ん?そうだ、俺今素材持ってるじゃないか!
「あの、買い取りだけお願いできますか?」
「はい、いいですよ!どんな魔物ですか?」
「あ~…ここで出すと大変です」
「ええ?そんな事ありますか?」
皆その反応をするんだよ。俺はな、初見じゃないから知っているんだよ。
「良いですか?やばいですよ?」
「そこまで言うなら、隣の解体場に移動しましょう!」
ウサギの獣人は”こちらです~”と言って流れるように移動する。俺もそれについて行くが、隣に居てくれた女の子はもう既にその姿を消していた。




