マルカの試練、英気
「なんなのだこれは!かっこいいのだ!」
手に取った不思議な杖は棒の先に大きな輪っかが付いていて、更にその輪に小さな輪が八ほどついている。
「我、錫杖またの名をエイキなり。貴殿、名前は何と申す?」
「んな?!喋るのだ?此方はマルカなのだ!」
「善き名だ。丸がついておる。我と同じなり!」
喋るだけでもかっこいいのに、更に武器の見た目もかっこいいのだ?これは…研究の必要が出てきたのだ!わくわくするのだ!エイキは”研究、マルカよ、智慧を求めるか?”なんて聞いて来るのだ。そんなの決まってるのだ!もちろん求めるのだ!
「では、試練を与える。」
「行くのだ!!」
急に精神世界の様な場所に連れてこられる。何もない、白一色の無の空間。
「ここは…何処なのだ?」
「試練の場所なり。マルカが望めば、試練を始める」
「やるのだ!」
「そうか、試練は我と共に同じ呪文を唱えよ」
唱えればいいのだ?簡単なのだ!1…2…3、火炎魔法……?何も出ないのだ?!どういう事なのだ?!此方が魔法をミスするなんてありえないのだ。
「そう、これは我とマルカの試練なり。」
「其方と此方の試練?」
「我の能力は二人で同時に魔法を行使することによって大いなる力を授ける事なり。」
まさか…二人で同時に唱える…のだ?何十、何百もの魔法を行使できる此方にとっては大変な事なのだ…。一緒…数字を割り振ったりすれば行けるのだ?試しにやってみるのだ!1に火炎魔法を設置して…。
「1!!」
杖からは何も出てこない。杖は魔法を拒否したかのように、うんともすんとも言わず、ただ振ったときの金属音を奏でる。
なんなのだ?なんなのだ…。どうすればこの杖は此方の物だ、と認識してくれるのだ?分からない…分からないのだ!
「うむ、悩むのが良いなり。時間は山ほどあり、試行回数を稼ぐのには最適なり。」
「もしかして…心が読める訳ではないのだ?」
「ほぉ。どうしてそう思った?」
「さっきから表情を見ているだけな気がするのだ。細かい部分までは分かり切っていない気がするのだ」
「ふむ、正解なり。」
「という事は…此方は口に出して意思疎通をする事が大事なのだ?」
「そういう事なり。」
「じゃあ、さっきの火炎魔法を一番と番号を振って、火炎魔法を唱えた事にするのは良いのだ?」
「それでは唱える事は出来ないなり。」
どういう事なのだ?”それでは出来ない”?という事は正解があるという事なのだ。もっとよく杖を細部まで見る事が重要なのだ?見れば見る程面白い形をしているのだ。杖の部分は今使っている杖となんら変わらない木製なのだ。しかし、頭の輪がたくさんついている部分だけは金属なのだ…?金属なのだ?
「まさか、魔法を使うために杖の振り方があるのだ?」
「やはり賢いなり。」
「であれば…どうすれば正解を導き出せるのだ?」
「心が答えてくれる。」
心が答えてくれる。杖を持って上下に揺さぶってみたり、振り回したりしてみる。一瞬だけ、何か見えた気がした。もう一度同じように振ってみる、すると火炎魔法のイメージをする事が出来た。
なるほど、そういう事なのだ?じゃあ、ここに居る間すべての魔法を試さなくてはならないのだ!嬉しい、嬉しいのだ!こんなにたくさんの魔法を使えるのはいつ以来なのだ?もう…三百年は使ってないのだ!
「では、始めてみようぞ?」
「分かったのだ!よし…火炎魔法発射なのだ!」
……。やばい…精神世界なのにぶっ壊しそうな程の火力が出てしまったのだ…。この杖、封印した方がいいのだ?だって…爆風で息が出来ない程なのだ。
「なんなのだ?!」
「これが我らの力ぞ?」
「そうなのだ?!とんでも無い事をしている気がするのだ!」
「マルカの研鑽の力が大いにあるなり。」
「そ、そんなに何かを懸命にやったことは無いのだ…。」
健一みたいに一生懸命に何かをやる事なんて此方には出来なかった。研究だって楽しいから続けているだけなのだ、それを知ったのは…健一の旅に帯同してからなのだ。
「比べる必要は無いなり。マルカは一生懸命に何かを出来ているぞ」
「んな?何故そう言い切れるのだ?」
「楽しい事を続ける事は大事なり。好きこそものの上手なれ、ぞ?」
「それは…良い言葉なのだ!」
「それでよいなり。ではここからは研鑽の時間ぞ?」
その言葉を聞いた後は狂ったように練習したのだ。ずっと、ずっと体に教え込ませるように。動作を研究して、それが魔法に繋がる。シャンシャンと音が鳴る。魔法は威力を変えられる事も知ったのだ。杖は精霊と会話できる唯一の存在だ、と知ったのだ。
「はぁ…はぁ…どう…なのだ?」
「合格なり。このエイキ、力をお貸ししようぞ」
「はぁ…」
後ろに倒れ込む。もう…歩くための力すら残っていない。それでも、仲間の元に向かうために…精神世界から出る事にしたのだ。




