六話 ミヤビの試練、才気
この喋る腹立たしい武器は何なのでしょうか?わたくしに一生喋りかけてきます。そして、わたくしの事を知能が足りないともいうのです、あぁ、今すぐに壊して差し上げたい。
手元にある鉄の塊を眺める。四つの輪が開いていて、握ったときに力を込めやすい形状をしている、名前をナックルダスターと言いました。
「君には俺を使う才は無いだろうね」
「やって見なければ分からないのではないでしょうか?」
「いや、分かる。伝わって来るよ、力任せに拳を振るい、何も考えずに生きてきた君の姿が。」
なんなのです、好き放題喋りやがって。腹立たしい、こいつはわたくしの事を何も知らない癖に…。わたくしは選ぶ武器を失敗したのでしょうか。ふと、前を見上げたら、平原にたどり着いていました。疑問に思い首を傾げていると”ここが君の試練の場所だ”と武器は言ったのです。
「試練ですか?はて、わたくしを主としては認めないのでは?」
「やって見ないと分からないと言ったのは君だしね?それに君が俺を手に取ったのは運命だ」
「くっ…やってみますけれど」
「じゃあ、行こうか。この先、君は君を超えないといけないからね」
武器はわたくしに使われるために、使い方を教えてくれます。丁寧に、丁寧に。こんなに憎まれ口を叩くのなら、教えなくたっていいのに。話半分に聞いていると”じゃあ、やって見な?”と言われました。目の前には人間…それも盗賊が大量に出てきました。はぁ…わたくしのトラウマをほじくり返そうとでもいうのですか?
「じゃあ、やりましょうか。」
「あぁ、見せてくれ、君の覚悟を。」
はぁ…はぁ…。何故?わたくしが押されているのですか?数は確かに、わたくし一人に対して相手は三十程居ます。それでも、人間に負ける程わたくしは弱くないはずです。力…力が足りないのですか?健一さんの隣を歩くためには…。殴りながら唇をかみしめます。
「何故…何故です」
「……。」
「武器、どうしてあなたは黙っているのですか!」
武器は答えなくなりました。相手の盗賊は何回倒しても蘇ってきます。何故?蘇生なんて…今まで無かったではありませんか。それに、倒した時に何やら靄が邪魔をして止めをさせません。どうして…もしかして、わたくしを葬るためにこの試練を課したのですか?!くそ…罠に嵌められましたか!
「いち早く…健一さんの元に向かわなければならないのに!!」
「はは、外れだ。君は本当に己に向き合わないね?だからこういう結果になっているんだ」
「なんなのですかぁぁ!!!」
武器を叩きつけようとします。しかし、手から離れないのです。何回も、何回も握っている物を叩きつけようとして、それでも離れない。どうして…なんでですか。私が何をしたと言うのですか!ただ、健一さんのお役に立てればそれで良かったのに…。
「はぁ…。」
「なんだ?諦める気になったのかな?」
「……。」
…考えるのです。何故、この状況になっているかを。試練はなんだと言いましたか?武器の特性はなんだと言いましたか?わたくしはこの試練でわたくしの中に何を見出せばいいのです。深呼吸を一つして、思考を巡らせる。これはきっと、何かを見たいからしているのです。
そうです、ここの領主は言いました。力任せに武器を振るう事を武人族は許さない、と。特に…この子たちは扱いが難しかったから、倉庫にしまったと。そして、この子はわたくしに何かを見せようとしている。わざわざ、わたくしが少しでも怖がるように盗賊を用いて…。
「そうだ、君はやっと気づいたか?」
「今いい所なのです、黙りなさい」
「そうか、なら黙っていようかな?」
少しでも怖がると何が生じると思いますか?体に力が入る。力が入ったら、技術が杜撰になって……。まさか、力の振るい方?力の振るい方を見せていると?いや…確証が持てません。何か…何かあります。そうだ…靄?何故私が全力で殴ると靄が生じるのですか?何故蘇生されるのですか?もしかして…力の加減!!
目の前の盗賊に目を凝らします。そうですね、盗賊です。健一さんがくれたイメージ通りの盗賊の姿なのです。しかし…他にも何か見えますね…?何でしょうか?数字…?六十九?力の加減の仕方?これしかなさそうです、やってみるしかないでしょう!!
わたくしは体の力を抜きます。相手はにやにやしていて本当に気持ちが悪いですが…。さぁ、やりましょうか。力を抜いた拳を相手にぶつけます。あぁ…やはり、盗賊は蘇生されません!
「ふぅ…やっとたどり着いたんだね」
「もしかして…貴方はわたくしを煽って…わざとこの展開にするために?」
「そうだね、俺の名前に由来しているらしいんだ。俺の名前はサイキ」
「サイキ…とは何でしょうか?」
「さぁね?それは分からないけど、良いの?目の前にはまだ盗賊がたくさん居るけど?」
「えぇ、もちろんすべてを倒しつくしますよ?」
早く報告しなくてはなりません。きっと健一さんなら知っているかもしれないです、このサイキという言葉の意味を。試練を終えて、サイキと一緒に健一さんの元へ戻って行った。




