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「我らはこの街を去る事に決めたのじゃ、次の領主を選定するのじゃが…誰か居らぬかの?」
……はぁ?!この街を去る?!どこに行くつもりなんだ?!だって、領主なんでしょ?領主が次の領主を選定するのは…。そうだ、次代の子供を作れないからこその決め方なのか。いや、だけど…タチマチヅキとモチヅキはじゃあ、どうやって領主になったって言うんだ?
「我らは魔王様に任されてこの地を見て来た」
「じゃがの、この地はもうわっちらが見守る必要は無くなったんじゃよ」
「だから、この地を守っていくものに譲り渡す」
聴衆がざわつきだす。それにしても…この地を守っていく必要が無くなった…?もしかして、寿命問題の解決、領地を襲うかもしれない魔物の始末。これらはここを去る事を決断するか否かの判断を下すために…?横からミヤビがボソッと”そういう事ですよ”と囁いてきた。
「さて、それでは…そちら様じゃな、この領地で一番新しい者に譲るのじゃ!」
壇上にあげられたのは、洋装をした男の子だった。髪の毛は金髪のソフトモヒカンで如何にも洋風な顔立ちだ。なんていうか…本当に最近流行っていた気がする。この世界って…すごいな。壇上からタチマチヅキとモチヅキが降りて来る。男の子は何も気にせず演説を始めた。え、この土壇場で演説?!勇気が凄いな。聴衆は歓声を上げていた。
「二人とも、これはどういう事なんですか?!」
「心配せずともよい、これが領主の印じゃ。最後の仕事じゃったの」
俺は二人から領主の印を貰う。最後の仕事ね…。ミヤビが言っていた重大発表ってこれだったのか。それにしても…次代の領主を新しい考え方をしている者に譲るのは良い事だ。古い考え方を捨てろとは言わない。しかし、時代は新しくなるから。新しい考え方に順応出来る者に譲っていく事は大事だと思う。
「さて、それでは…わっちらの最後の願い、聞いてくれぬかの?」
「いいですよ?」
「我ら、主人様について行く」
「……なんて?!」
「わっちらも一緒に連れて行ってくれぬか?」
「え…そのためにこんなに大々的な事をしたって事?」
「そうじゃよ?それ以外ないじゃろ?」
「我は、主人様の力になりたいと願ってしまった」
「いいの?願ったり叶ったりではあるんだけど…その、事情があったじゃない?」
「そんなのはとっくに無くなっている。」
「わっちはモチヅキと一心同体なんじゃ、心まで伝わって来るんじゃよ」
まぁ…二人が良いならいいけど…ん?待てよ、そういえば”悪癖”がどうのって言ってたような…もしかしてロリコンを疑われたって事か?!あぁだからね。悪癖か…。しかも二人は武器が擬人化している訳だから…ダブルだ?!俺はミヤビにこそっと”どこでそんな言葉を仕入れたんだ?”と尋ねる。ミヤビは”健一さんの心の中です”と言った。
はぁ…俺の心の中か。それなら仕方ない。幼女趣味は別にないし、俺に合った武器として今後俺の元で活躍してくれるのなら、受け入れないなんてありえない。目の前の二人は少しばかり緊張しているように見える。連れて行ってもらえるかどうかを気にしているのか。早く声を掛けてあげないとまずい…か。
「一緒に行こう、よろしくね」
二人の顔が華やいで、同時に武器になった。モチヅキは俺の手の中でヘッドセットに、タチマチヅキは…細剣になった。美しい装飾が施されているが、決して豪華な感じではない。シンプルで、俺の手に良く馴染む。タチマチヅキの意思が聞こえてくる”この姿になってしまえば”わっち”は戻れないんじゃよ”と。
「ありがとう、よろしくね」
「感動の所申し訳ないのですが…わたくし達の武器はどうされますか?」
「我が案内する、だけど、試練がある」
「試練かい?」
「過酷で険しい試練がある。」
「分かり…ました…私も…相棒を手に入れるため…頑張ります…!」
「マルカも頑張る?」
「此方もなのだ?!此方は…」
「杖もある、見て見る?」
「杖!見るのだ!どんな杖なのだ?!」
マルカの一本釣り、マルカの餌は杖だったみたいだ。かっこいい杖だといいね。人型の形態のモチヅキに案内されて、領主の家に案内される。一階の部分、違和感があった場所。階段を上にはね上げて、奥に入っていく。すると、そこは倉庫になっていて、綺麗な武器がずらっと並んでいた。
「な…なんだこれ。」
「これが意思を持つ武器、扱いづらいと言われて可哀そうだったから隠した」
皆は各々自分の目的の武器を探す。皆はそれぞれ、武器を手に取ると、何か話し始めた。でも、俺にはその姿は見えない。皆…おかしくなっちゃったのか?!俺の様子を見てモチヅキが”違う、主人様、これは対話”と言った。
「対話?」
「そう、彼らにはそれぞれ、特色がある」
シュエリには快気、メェルには勇気、マルカには英気、ミヤビには才気。それぞれ意味があるらしい。と言うか…全員が自分にぴったりなものを選んでいる所に運命を感じるな。皆は俺に気づかずにそのまま外へと出て行った。俺は後を追いかけたが、それぞれが別々に方向に姿を消していく。
「だ、大丈夫なの?」
「安心して、あれは試練が始まる合図」




