漣 凪良
洲崎は自分に正直過ぎるくらい真っ直ぐなんだろう
1時間も経っていないだろう少ない会話の中でも
洲崎の喜怒哀楽は、不快になることなく
丸みを帯び僕の中へと入ってくる。
僕はもう一度外へと目を向け 光り輝く、暖かい陽の光と向き合った。
陽の光…日の出…
まずい……
「洲崎、悪い今何時だかわかるか?」
「今ですか?ちょっと待ってください、下に時計があるので見てきますね」
洲崎は気持ち早く、下へと向かった。
「漣くん、今は6時過ぎぐらいですね。 何か急ぎの用事でもあるのですか?」
「もうすぐ、父さんが」
「お父様?」
「もうそろそろで父さんが夜勤からかえってくる時間なんだ、父さんは度が過ぎるほどの心配性で
事件にでも巻き込まれたんじゃないかと大ごとにされたら面倒だから」
小さい頃、昨日と同じように夜中に海に出かけたことがあった。
その時に、つい浜辺で寝てしまって父さんにひどく叱られたことがあった。
昨日と同じ、、、
あの日はただ海を見ていたかった。
ただそれだけだったな。
「確かに、そうですね。でも、お母様は?同じように心配なさってるんじゃないですか?」
「母さんは、、大丈夫。家にはいないんだ。僕が小さい頃事故でそれっきりだから」
「っ。すみません。。。当然の事のように話をしてしまい。」
「いや、大丈夫。昔のことだ。それより洲崎、悪いがちょっと急いで近くの船着場まで行ってくれないか」
「あっ、はい!すぐに移動しますね、移動中少し揺れが強いかもしれないので気をつけてくださいね」
洲崎はそういい、また下へと駆け出していった。
母さんがいなくなってから、洲崎のように自分の発言をひどく悔いる人を何度も見てきた。
仕方のないことなのに。
どの時代でも、父と母、2人の存在があり子供がいる。
大丈夫、僕は受け入れられてるから。強がりでもなく本当に。
船が動き出したようだ、
僕は洲崎が降りていった下へと足を動かした。
階段を降りた先は、海風が吹き
周り一面には綺麗な青色が広がっている。
船の先頭に位置する操舵室には、洲崎の後ろ姿が見える。
船を操縦するのが楽しいのか、波で揺れているからか洲崎の体は左右へふわふわと揺れている。
「本当に洲崎が操縦しているんだな」
僕は操舵室の扉を開け、鼻歌混じりの陽気な洲崎へと声をかけた。
「あっ、漣くん!! 入ってくるならノックとかしてくださいよ!」
わかりやすく動揺している。
「あ、わるい。。」
娘の部屋に入ってしまった父親の気分だ。