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アクアのため息  作者: 桜庭眞秀
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洲崎涼香

「起きましたか!?大丈夫ですか?起き上がれそうですか?」


再び目を開けるとそこには、僕より上か同じぐらいの女の人がひどく心配そうな顔で僕をのぞき込んでいた。


体中が重くてすぐに起き上がれそうにないな

顔も少し腫れているような感じだ


「あの...大丈夫ですかどこか怪我でもしてるんじゃ」


「いや、大丈夫ありがとう。」


「よかったです。ひとまず安心しました。少し待っていてください。

 今暖かい飲みものを持ってきます」


「ありがとう、君は。。。」


僕の問いは宙を舞い、彼女はどこかへ行ってしまった。

どうやら僕は何かに生まれ変わったわけではなく、人のままらしい。



ここはどこだろう、横になっているのに体が揺れているような感覚がするし

聞きなれた波の音が聞こえてくる。

船か?

船だとしたら、この船は彼女のか?それともだれか別の人の船だろうか。

それに彼女は一体・・・。僕の前に現れたのも彼女なのだろうか。

かすかに動く首を部屋の外へと向けると

そこからは太陽の光が差し込んでいた。

見慣れたはずの光なのに何故かいつも以上に眩しく、僕は視界を手でふさいだ。


あれこれ考えていたら、彼女が戻ってきたようだ。

「すみません、今はこれぐらいのものしかないですがよろしかったらどうぞ」


「ありがとう」


暖かい緑茶と非常食のようなものを僕は口に運んだ。



一通り、体が軽くなって来たので彼女に問いかける。

「助けてくれたのは君だよね、僕は...」


「漣 蓮君ですよね?もしかして私のことわかりませんか」


彼女はなぜか僕のことを知っているようだ

親戚にはこんな美人はいないし、

でも確かに少し見覚えがある気が


「その様子ですとピンと来ていない感じですね、ちょっと悲しいです。


 では改めて、というのも変ですが

 私は すざき すずか。漣君と同じ睦河高校2年2組 洲崎涼香です。」


そうか、彼女は僕と同じ高校でしかも同じクラスだったから見覚えがあったのか

それに確か彼女は、学級委員だった気がする。


「いや、ごめん。あまり記憶力がいいほうじゃないんだ」


「記憶力どうこうの話ではない気もしますが、、」

彼女はあからさまに悲しい表情を浮かべながらそう口にした


それより、

「ここはどこなんだ、船の上なのか?」


「はい。私の船なんですけど

 ちょっと古いですが沈没なんてしませんから安心してください!」


彼女は胸を張ってそういったが、少し恥ずかしくなったのかすぐに顔を下に向けた。


それに、彼女の船?ということは

「君がこの船を操縦しているのか?一人で?」


「そうなんです、少し前に知り合いの方にお譲りしてもらったんです」



高校生が普通船なんて所有しているだろうか、

いくらここが海に近い地域であったとしても、1人で操縦

しかも昨日なんて、海の中を1人で


「あの、漣君?」


「昨日君はどうしてあの海にいたんだ?」


「私、夜によく海へ出るんです。風の音、波の音がよく聞こえるあの海へ

 いつもは、水面を見ているだけなんですが昨日はふと海の中だとこの音たちはどう聞こえるのかが気になってしまって」


僕も海は好きだ

彼女が言うように音がいい、あの音とあの一面に広がる青色の景色が。


「そんなことより、私のことはいいんです。漣君のほうこそ何してたんですか!!」

 私が偶然見つけたからよかったですが、あのまま誰にも見つけられなかったら最悪...」


彼女は自分のことの様に怒りそしてまるで子供を諭すかのような目で僕を見る。



「僕も、洲崎と同じようにあの海が好きなんだ。いつもは砂浜から見ているだけなんだけど

 昨日は、海の中を泳いでみたくなってそれで気が付いたらああなっていた。」


僕は嘘をつく。


「ああなっていたって、、漣君、、いつも上の空でぼーっとしている姿を見てはいましたが

 何の準備もせずこんな真冬に海の中を泳ぎたいとか自殺行為ですよ、まったく。

 なんというか抜けているという次元ではない気がしますよ、、、」


深くため息をつき、彼女はそう僕に言葉を投げた。

自殺行為か。



「でも、漣君が海を好きだなんてなんだか意外です。何にも興味のないそんな人だと思っていたので。」


「...。洲崎は結構,,,棘を、持っているんだな」


「あっ。!すみません、話したこともないのに失礼でしたよねごめんなさい!」


彼女のいうことは間違っていない。



「いや大丈夫、よく言われていることだし慣れてる。」


彼女、、洲崎は自分の失言を後悔するようわかりやすく沈んだ。

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