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勇者はどこにいった?〜これは、勇者を探す物語〜
魔王がいた。
魔王はすべてを憎み、すべてを滅ぼそうとした。
勇者がいた。
勇者はすべてを愛し、すべてを守ろうとした。
魔王は魔王の剣を持っていた。
勇者は勇者の剣を持っていた。
互いに一歩も譲らない激闘の末、勇者は、魔王の胸を、その勇者の剣で貫いた。
「君はもう、誰も傷つけることはできない」
「でも君をもう、誰も傷つけることはできない……」
暗闇の中、声がした。
その声は、あまりにも優しく、
その声は、あまりにも哀しそうだった。
――この胸をその剣で貫いたというのに。