9話 料理人フィオネ?
「ヘリ〜ン。草むしり飽きた。別の仕事...」
ここに来て3週間、すっかり草むしりに飽きた私はヘリンに悪態をついていた。
なんといってもこの草むしりが退屈すぎる。
身体を動かすのは好きだが、単純作業は苦手だ。
「あんたは身体も小さいし、重いものも持てないから駄目。それにこの前掃除させたら壺を割ったの忘れてないわよね?」
ギクッ
そうだった。なんでもあの壺は私たちが5年働いても買えないくらい高いとかなんとか。
新人だからなんとか許せて貰えたけど次は無いって。
「あんたが出来そうなことねー...」
ヘリンは考えながら柱に肩肘ついてサボっている。その瞬間、渡り廊下の奥から足音が聞こえた。
「ヘリン!厨房に人手が足りないんだ。来てくれ」
「分かったわ。じゃあねフィオネ、またお昼に」
ヘリンが居なくなり、私はぽつんと1人草刈り作業に戻ってしまった。
ちぇっ。いいなーヘリン、それにしても厨房か。料理なんてした事ないけどなんか面白そう。
ここに来てから毎日美味しい食事を貰っている。以前感じていた空腹と頭痛は無くなったし、視界は霧が晴れたようにスッキリしている。硬い床で寝ていたときよりぐっすり寝れてるし、すごく良いんだけど...
たまにめちゃくちゃ不味いご飯がある。
あれが無ければもっと最高なのに。
「......」
私は指をパチンと鳴らす。良いこと思いついた。
自分が料理人になれば好きな物だけでまかないを作れるのでは...?
天才すぎるアイデアに我ながら恐ろしく思う。早速お昼にヘリンに交渉しに行こう!
太陽が真上に登った時、午前業務終了のチャイムが鳴る。私は急いで食堂へ向かった。
「あんたが?料理人〜?フッ」
ヘリンが鶏肉にフォークを刺しながら笑ってきた。
まるでお前にできるはずがないとでも言いたげだ。
「フィオネ、料理に興味あるのか?」
突然会話を遮ってきたのは料理長のライアンだった。
「それなら、午後は食堂を手伝ってくれ。第1王子の遠征の準備でここの人手が足りないんだ」
「だから人手が少なかったの。本城は大変そうね」
「しばらくは俺たちだけで離れを回すことになる。フィオネ、大丈夫か?」
まさかこんなに簡単に仕事を貰えるとは。私はふたつ返事でライアンの提案を受け入れた。