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6話 出会い

「あら、ちゃんとやってるみたいね」


「あっ...」


無我夢中で草むしりをしていたので後ろに立っているヘリンに気付かなかった。


「お昼ご飯は使用人の食堂で食べるのよ。ついてきなさい。あ、その前にその泥のついた手を洗ってきて。この先を左に曲がったところ、水汲み場があるわ」


私は言われた通り、通路の左を曲がった。そこにはあまり使われてなさそうな水汲み場がある。


手を洗うなんて久しぶりだな。飲み水も雨水くらいでしか確保出来なかったから。こんなたくさんの綺麗な水を見るのも初めてだ。


私は蛇口から流れ出る水を手に貯め、恐る恐る飲んだ。


ごくっ...

喉が乾いていたようで1口飲むと止まらなくなった。


ごくっ...ごくっ...

美味しい。こんなに喉の乾きを満足行くまで満たせる時が来るとは。

神経が興奮して目の前の視界が幾分ハッキリしたような気がする。

ずっと感じていた頭を締め付けられるような感覚も少し和らいだような。


「はぁーーーっ...」


美味しかった。そろそろヘリンのところに戻ろう。じゃないとまた怒られるかもしれない。


確かこっちから来たような...あれ?


こっちに進んで...こう行って。そうすればヘリンが居るはずだ。


ん?

こんな下る階段は絶対通ってないが、こっちにしか道がないので行くしかない。


おかしいな、戻るまでこんなに行程があるはずがないんだけど。


こっちでもないし、戻ってもどこを通ったのか全然分からない。


また下の階段...あ、ここから外が見える。窓を見るとかなり上の方にさっき通った渡り廊下が見えた。

ここは地下のようなところなのかな?


それにしてもこの辺は全然掃除が行き届いてないな...

地面のカーペットは埃まみれ。床には物が散乱していて、窓のカーテンはビリビリになっている。


おまけに暗くてなんだか不気味な空間だ。

あんなに綺麗な上の階から想像できない汚さだなと思いだがら、これ以上進むのはまずい気がするので引き返そうと振り返った瞬間。


バキッ!


「えっ!何...」


何かを踏んだような音。振り向くとそこには血まみれの男が暗がりの中でものすごい形相で私を睨みつけていた。


目が合った瞬間、私はスラムで会った頭のおかしい男のことを思い出した。


あれは殺人鬼の目だ。


危険を感じた全身の毛穴から冷や汗が止まらない。

怖い。逃げないと何をされるか分からない。


「うわああああ!!!」


一目散にその場から走り逃げた。もう元の場所に戻れなくても良い。一刻も早くここから逃げたい。


私は来た道を無我夢中で走った。


「きゃ!」


廊下を駆け上がりすぐ近くの角を曲がったところで誰かにぶつかった。


「ちょっと、あんたどこいってたのよ!!」


「はぁ...はぁ。ヘリン...」


きゃ!っと可愛らしい悲鳴を上げたのは他でもないヘリンだった。


「ヘリン、下に、血まみれの殺人鬼が...」


「!あんた、まさか地下に行ったの?」


ヘリンが突然真顔になった。


「いい?絶対地下には入ったら駄目よ。あそこには大昔、この城を攻めてきた敵国の王が地下牢として幽閉されて、そのあと処刑されたの。あんたも見たでしょ”それ“を」


「じゃあ、あれは幽霊ってこと...」


背筋がゾワゾワする。生まれてこの方死体は見たことがあるが幽霊は見たことがない。


「きっと私達の国を恨んでるわ。呪い殺されたく無ければあそこには近寄らないことね。それと...フィオネ」


「?」


「あんたのせいでお昼ご飯を食べ損ねたわ。覚悟しななさい♡」


「えっ...あっ...」


ヘリンは笑いながら怒っていた。右手がグーに丸めた状態でかなり力が入っている。もしや...


ゴンッ!


「ぎゃあああ」


私の恐怖はヘリンのゲンコツによる衝撃で痛みのショックへとすり変わった。












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