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40話 おかえり

辺り一体を包んでいた光はいつの間にか元の状態に戻っていた。


「はっ...今のは?」


「一体何が起きて...?」


どれくらいの間、光の中にいたのか分からない。

1分くらいのような気もするし、もしかしたら5時間くらい留まっていたような気もする。


「王宮医師を呼んで来ました!ってあれ...?けが人は...?」


「ん...眩しい」


その瞬間、隣で倒れていた少年がぽつりと呟いた。


「シウォン!起きたのか...?」


床にあった血は消え、シウォンの傷は跡形もなく綺麗になっている。


「僕は...なんで生きてるの...」


「良かった...本当に呼び戻せたんだ...」


私は光の中でシウォンの魂に触れた。

彼はずっと暗闇の中を歩いていた。


不安で、孤独で、少し歩けば足がボロボロになるような茨の道を逃げずにここまで戦ってきた。


彼は努力することを止めなかった。いじけて殻に閉じこもることも出来たのに、真っ直ぐに自分と向き合った。


どうしよう、こんなの見せられたら余計好きになっちゃうな。

シウォンの頬に手を当てる。そこから伝わる体温が狂おしいほど愛しく思えた。


「お前、一体何をした?それに、その手に持っている物...」


今までずっと黙って状況を見ていたジークがついに口を開いた。


「それは月石...!どうして貴方が持っているのですか?」


ミッジが私の持つ月石に気付く。


「月石だと?それが?ちょっと待て、貴様まさか...」


ジークの顔色が変わる。

この状況をどうやって説明するべきか...


「お前、さっき聖女がどうのこうの言っていたよな?月石は蘇生させる力を持つが普通の人間が扱えるものでは無い。精霊と契約しなければ直接触れもしないはず。お前、一体何者だ?」


「えっあっ...」


「答えろ」


私は言葉に詰まった。自分が聖女の生まれ変わりそのものだということはついさっき知ったことだ。


それに、今は力を使いすぎたのか頭が回らない。

シウォンが生き返ってくれたこと、私はもはやそれ以外はどうでも良かった。


「いや、やっぱり答えなくて良い。そうか、そういうことか皇弟...貴方が持っていた最後の切り札は“これ”だったんだな」


ジークはどうやら自力でその答えにたどり着いたようだ。


「お前、聖女だな?」


そう言った途端、様子を見ていた周りの貴族や使用人達がざわざわと騒ぎ出した。


「来い、お前にはやってもらうことがある。聖女がいるなら話は早い。今すぐに母上も呼び戻して貰おうではないか」


ジークは私の腕を掴み、シウォンから引き離すように強引に引っ張った。


「痛っ...やめてください!」


「ジーク!やめろ」


止めに入ったスワムがジークの腕を掴んで引き留める。


「邪魔するな!」


「かはっ...」


その瞬間、ジークの蹴りがスワムに入った。

蹴飛ばされた勢いでスワムは遠くに吹っ飛ぶ。


「兄上、もうやめてください!フィオネを離して!」


まだ手足に力の入らないシウォンはその場で叫ぶことしか出来ない。


「愚弟よ、何をそんなに必死になっているんだ?いつも俺が欲しいものを全て持っていたくせに、1つくらい俺にくれても良いのではないか?」


「僕の物をいつも持っていたのは貴方でしょう!何一つ持ってないのは僕の方です!フィオネは渡さない!!」


「ふうん、お前この女がそんなに大事なのか?あ、良いことを思い付いた。シウォン、目に焼きつけろよ」


ジークはそう言うと突然フィオネの首を締め始めた。


「はぁっ...!?うぐううぅ....」


「なっ!?やめろ!!!何してる!!」


私は突然の事でパニックになった。強い力で首を締められて息が出来ない。


殺される...!!!


「ううっ...たす......け...!」


「フィオネ!!!」


「手間はかかるが月石だけあればまあ、母上の事は何とかなるだろう。だからこの女は今からお前に苦しみを与えるためだけに殺すことにするよ。どこの聖女か知らないが、こいつと関わったことを後悔するんだな」


「やめろ!!!やめてください兄上!!お願いです!」


シウォンの必死の叫びはジークに少しも届かない。


苦しい。もう酸素が無い。

意識が...保てない...

あと少しで本当に...死んでしまう。誰か助けて...














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