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30話 魚の塩焼き(番外編)

本編の展開が中々複雑になってしまったので息抜きで書いた番外編です。

タイミング的には16話と17話の間くらいの話です。

読まなくても展開には支障ありませんが箸休めだと思っていただけると幸いです。

「フィオネ様、今夜11時地下の渡り廊下で行われる夜会に招待しま...す?お腹を空かせて来てください...って何これ?」


午前の仕事を終えた私はエプロンのポケットに小さい紙が入っていることに気が付いた。


おそらくこの紙を入れたのは他ならぬシウォンだろう。しかし、改まって来て欲しいなんて言われたのは初めてだ。


「”夜会”って書いてある...ダンスでも踊るのかな?」


私はとりあえず紙に書いていた通り、ライアンに断って夕飯を抜くことにした。


皆が寝静まった後、私は1人ベッドで様子を伺っていた。


「むにゃ...ちょっと!私が先に飛ぶのよ!あんた達は黙ってそれを履いてればいいの...よ」


相変わらずヘリンの寝言は意味が分からない。

私はそーっとベッドから出て地下へ向かった。


地下へ向かうため、階段を降りるとなんだか白い煙が上がってきていることに気付いた。


「なにこれ...!?火事!?」


私は急いで階段を駆け下りた。それと同時にどんどん煙は濃くなっていく。何かが焦げたような匂いが余計に私を焦らせた。


「シウォン!だいじょ...ぶ!?」


「あっフィオネ!良かった〜来ないかと思ったよ。ちょっとこっち来て!」


「...へ?」


そこには串刺しになった魚を焚き火で炙るシウォンの姿があった。


「これ、何を...してるの?」


「今日はね、フィオネにご馳走しようと思ってさ」


ぐぅ〜


「あっ...」


その瞬間、夕食を食べていなかった私のお腹は周囲に聞こえるほど大きく鳴ったのだった。


ううっ...死ぬほど恥ずかしい。


「ふふっこれもう焼けたから食べようよ。そのために呼んだんだよ」


シウォンは特に気にする様子も無く、串に刺された魚を私に渡した。


魚はちょうど私の顔くらいの大きさだ。尾びれの方から串で一突きされ、こんがりと黒く焼けている。


「シウォン、これなんて言う魚?あと結構...その、焦げてるような...」


「アジだよ、アジの塩焼き。まあそう言わずに食べてみてよ」


「へぇ...いただきます」


私は魚の腹をおそるおそる1口、齧った。


ぱくっ...もぐもぐ...


「あつっ...おいひぃ」


食べた瞬間、口の中に塩気のある魚の香ばしい匂いが広がった。

皮があれだけ黒くなっていたので不安だったが、焦げていたのは表面だけで中身はちょうど良い焼き加減だ。


「身が詰まってておいひぃ...ね。あつっ」


「ふふっそうでしょ!良かった。まだまだいっぱいあるから食べてね」


シウォンはそう言うと、奥からバケツいっぱいに入った魚を目を輝かせながら見せてきた。


「うわっすごい量!シウォンが全部採ったの?」


「へへっ頑張ったんだよ」


「ねえシウォン、どうしてこれを私に食べさせてくれたの?私、誕生日とかでも無いけど...」


私は魚の量に驚きつつも、シウォンに素朴な疑問を投げかけた。


「フィオネにいつも食べ物貰ってるから、何か返してあげたくてさ。僕が今できることと言ったらこうやって魚を採ってご馳走することくらいだから...」


シウォンはどうやら私が持ってくる食べ物を貰ってばかりなのが申し訳なく思っていたらしい。


別に気にしてないのに...


「そっか...美味しいね、この魚。私は好きで持ってきてるから気にしなくて良かったのに」


「えっ...!?すっすき!?」


「えっ?うん。好きで持ってきてるから...どうかした?」


「あっそっ...そっか。そういうことか...ちょっと聞こえなかっただけだから大丈夫、でもいつもありがとうね」


「ううん、こちらこそ」


シウォンは途中何かに狼狽えたが、私が魚を食べるのに夢中でよく分からなかった。


それにしてもこの魚美味しいな。お腹空いてたから止まらない...もぐもく。


そうしてまた、食べるのに夢中だったフィオネはシウォンの耳が赤くなっていたことに気付くことは無かった。














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