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24話 指輪の文字

「っていうことがあってさ。ラッキーだったって言う話」


「...危ないな」


「まあ、そのあとすぐ自警団が来てくれたから大丈夫だよ。それに食材も貰っちゃったし明日はシチュー作るらしいよ」


「......」


先日のひったくり事件をシウォンに話すと彼は少し暗い顔になってしまった。


「どうかした?大丈夫だよ。ここにはひったくりは来ないよ」


「そうじゃなくて、僕はフィオネが心配なの。その時は運が良かっただけでひったくり犯が勝手に転ばなかったらどうなってたか...」


「そっ、そっか。そうだよね...」


シウォンが私を心配してくれている。その事実を知って私はなんだかちょっと嬉しく思った。

今までそういうことを言ってくれる人は死んだ家族以外いなかったから。


「シウォン...実はね、伝えてなかったんだけどひったくり犯は勝手に転んだんじゃなくて...その、この指輪のせいで転んだんじゃないかなって思うの」


私はあの時ポケットに入っていた指輪をシウォンに見せた。


「これを持ち始めてから何度も不思議なことが起こるの...変なこと言ってると思うけど、本当なの」


私はシウォンを真っ直ぐ見つめた。指輪のことは誰にも言うつもりはなかったが、彼なら信じてくれるかもしれない。


「ひったくり犯が転ぶ前、この指輪が光ったの。でもどういうことなのか分からなくて...」


「我、聖なる者を導く者なり」


「え?」


そう書いてあるよ、とシウォンは指輪の内側に彫ってある文字を読んだ。


「僕が読んだ本にそういう内容があったような気がする。ちょっと待ってて」


するとシウォンは書庫から1冊の古い本を持ってきた。


「あったよ。確かこの辺に...約600年前、国同士の大戦争を1人の“聖なる者”が治めた。聖なる者はこの戦いにより力を失い、長い眠りについた。...その指輪の聖なる者ってこの大戦争を治めた人物のことじゃない?」


「???そうなんだ...?じゃあ聖なる者を導く者って誰?」


「この指輪は誰から貰ったの?」


「”カイン”って人。私、その人に紹介されてここに来たの。でもヘリンはカインを知らないって言ってて...」


「カインか...僕も知らないな。何にせよその人に聞いてみたら何か分かるかもしれないね」


「シウォンは...今の私の話信じてくれるの?」


「うん、信じるよ。フィオネが嘘つくわけない」


「シウォン...ありがとう」


シウォンに話して良かった。

私はその時、自分の中で初めて彼に対していつもと違う感情を持っていることを自覚するのだった。
















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