20話 野菜嫌い
ある日、私は食堂にて美味しそうな食事を横目に葛藤していた。
げっ...またこれか。
目の前に置かれた根菜と豆のサラダを見て私はうんざりする。
なぜならこのサラダ、とてつもなく不味いのである。
苦味しか感じない青臭い野菜にオリーブオイルと塩をかけただけの苦サラダ。
最近よく出るけど初めて1口食べた時以来、1度もそれ以上食べれたことはない。
「あら、今日も根菜と豆のサラダね。フィオネ、あんたこれ嫌いよね?私が食べるわよ」
「うん。というかヘリンはよく食べれるね...これあんまり美味しくないじゃん」
「私は案外慣れたわよ。野菜嫌いなんてフィオネはお子ちゃまね」
「むぅ...」
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「ヘリンにお子ちゃまだって言われちゃった。それにしてもあんなに美味しくないんだろう...」
その日の昼休憩、またふらっとシウォンの元に遊びにきた私は不味すぎるサラダの愚痴をボソリと零した。
「サラダ?うーん、サラダってそんなもんじゃない?僕もあんまりだよ」
「...シウォンってサラダ食べたことあるの?」
「えっうん」
私がここに来る前は魚を釣って暮らしていたシウォンがサラダ...?おかしいな。
「いつ...?」
「あ...えーと...あっ分かった!サラダにかかってるドレッシングが不味いんじゃない?どうせオリーブオイルと塩とかでしょ?」
「えっ!なんで分かったの?」
「野菜の臭みを消せてないんだよ。だから野菜の青臭さをかき消すような強い匂いの香辛料をドレッシングに使うべきだと思う」
「なるほど...」
私はシウォンの意見に感化され、上手く話を逸らされたことに気付かなかった。
「あのサラダ誰かが気に入ってるのかな?今度ライアンに聞いてみよ」
「ライアンって誰?」
「えっ料理長だよ」
「ふーん、そうなんだ...」
突然シウォンの態度が素っ気なくなった。なんでだろう?ちょっと長く居すぎたかな?
「あっ...長々といてごめんね、そろそろ戻るね」
「...うん」
そうして私はシウォンの態度を気にしながらもその場を後にし、ライアンの元へ向かった。
「実は...最近野菜の値上げがすごくてな。色々と質が下がってるんだ」
「値上げ?」
どうやら第1皇子の他国への侵略により一時的にストップした貿易があるらしく、それで良い野菜が入ってこないらしい。
「最近の野菜は味や鮮度も良くない...悪いなフィオネ」
「謝らなくても...でもそれならもうサラダの出すの辞めたらいいんじゃない?」
私はどうしてそこまでしてライアンがサラダにこだわるのか分からなかった。
「フィオネ、お前は幼いから知らないかもしれないが人間というのは適切な栄養バランスの食事を取らないといけないんだ」
「バランス...?」
「肉や魚はお前の爪や髪を作るんだ。食べなければすぐにボロボロになるだろう。野菜も取らなければ免疫が下がるし風邪を引きやすくなる。だから栄養バランスのことは常に気にかけているんだ」
あの不味いサラダは料理長が苦肉の策で考えた栄養管理だったらしい。
私は心の中で深く反省してライアンを責めた自分を責めた。
ライアン...不味いって言っちゃってごめんね...
しかし同時に、このサラダはこの後も出ることが確定したのだ。
私は考えた末、また夜中の厨房に忍び込むのだった。
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