19話 星降る夜に
私は両手にたくさんの食べ物を抱え、ある場所に向かっていた。
ドサッ
「ふぅ...」
「フィオネ...?どうしたのそれ?それにその格好...」
「私、はぁ、お祭り行ってきたの。はぁ...それで、これ一緒に、はぁ...はぁ...食べようと思って買ってきたの」
「そうなの?すごい重かったんだね、大丈夫?とりあえず座りなよ」
シウォンにはあれからこうしてたまに会うような間柄になった。
一緒に話したり、ご飯を食べたりするととても楽しいのだ。
「落ち着いた?」
「うん、大丈夫。いっぱい買ってきたからどれ食べる?ステーキとポテトと...焼き菓子とチーズサンドもあるし、あっそうそうこれ、飴細工!綺麗でしょ?」
私はシウォンと同じ赤い目をした虎の飴細工を見せた。
「わあ...綺麗だね」
「でしょ?私のはこの翡翠色の鳥だよ。虎は見た時にすぐにシウォンのことを思い出したんだよ」
「そっか...」
「私このステーキがずっと食べたくてさ。いただきまーす。もぐっ...もぐ。美味しいっ!」
「じゃあ僕も、いただきます。もぐもぐ...美味しっ...ソースが効いてるね」
「私がチリソースでシウォンのはガーリックソースにしたよ。私のと1切れ交換してよ」
「ふふ、いいよ。はい、あーん」
ぱくっ...
もぐもぐ...
雲1つ無い星空の下でシウォンとご飯を分け合う。それがなんだか今日はすごく特別な気がした。
「フィオネ、どうして...僕の分買ってきてくれたの?」
「私ね、ここに来てから誰かと食べる方が美味しいって気付いたの。だからシウォンの分も買ってきた」
その瞬間、シウォンは何故かびっくりした顔をしたがすぐに笑顔になってありがとうと言った。
「シウォンのその...お母さんのこと聞いた時、私も家族が居ないからちょっとだけ寂しいって思ってたの」
「フィオネも...?」
「うん、うちは家族が貧しくてお父さんは誰か分からないからお母さんと弟と暮らしてたんだけど2人とも病気で死んじゃったの。2人が死んでから何を食べてもあんまり美味しくなくて...でも、ここに来てからご飯が美味しくて、特に」
「特に?」
「シウォンと食べるご飯が1番美味しいんだ」
ぶほっ!ごほっ!
「シウォン大丈夫!?」
「だっ大丈夫っちょっとむせちゃっただけだから...」
シウォンは飲み物を盛大に零してしまった。辛い話を聞かせたからだろうか?
フィオネが余計な心配をしている時、シウォンの耳が真っ赤に染まっている理由が別にあることをフィオネは知る由も無かった。




