16話 マドレーヌ
「最近暑くなってきたわねー」
「なんかやる気出ないわよね。そう言えば旦那様もジーク皇子と遠征に行ったのよね?次はいつ帰って来るのかしら?」
「さあね、でも最近のジーク皇子の快進撃はすごいわよね。3ヶ国同時制圧ですって」
「すごいわよね、でも聞いた?本城ではとんだ暴君らしいわよ?このまえなんて言うこと聞かなかった側近をその場で斬り殺したらしいわ」
「「「えー!!!?」」」
昼食後の休憩時間、食堂にいた他のメイド達が井戸端会議をしていた。
彼女達は世情に疎い私の貴重な情報源なのでとてもありがたい。
どうやらこの国の第1皇子は中々の戦争好きらしく、皇帝が床に伏してからめっちゃ暴れ回っているようだ。
周りが手に負えないほどの難ある性格で、それを危惧した貴族たちは既に第1皇子派と第2皇子派で分かれているとか。
しかし誰も第2皇子のことを見たことが無いらしく、存在が謎に包まれていた。
ま、自分には大して関係の無い話だ。私は誰がこの国を治めようが正直どっちでも良い。
私はそんなことを思いながら手元の本を読んでいた。
「フィオネそれ、なんの本なの?」
「私も気になってたー!」
「”優しい料理の本”...?だって」
いつの間に話が終わった3人が私に声をかけてきた。
そう、私は昨夜シウォンの書庫から拝借した本を自力で解読していたのだ。
「...私、これが作りたくて。でもあんまり字読めないから...」
「私読めるから読んであげる!えーっとマドレーヌの作り方。材料は薄力粉、砂糖、バター、卵、バニラ...これ、美味しそうだし今ちょっと作ってみない?」
「さんせーい!なんか面白そう」
「いいわねー!ねっフィオネいいでしょ?」
「えっうっうん」
突然3人が作ろうと言い出したので私は流れに乗ってそのままマドレーヌを作ってみることにした。
まず、ボウルに砂糖と卵を入れて混ぜる。
そして薄力粉をふるいにかける。
「あっ難しいわねこれ、ちょっとこぼしちゃったわ。フィオネ、バターはどう?」
「いい具合に溶けたよ」
私はバターを湯煎にかけて溶かしている。バニラを入れて混ぜ、風味を付けたら取り出す。
材料を全て混ぜた後、型に入れて12分焼く。
焼いている間、食堂には甘いバターの香りが充満した。
「早く焼き上がらないかしら?」
「ちょっと私も見たいわ。押さないでよ」
オーブンの前を4人が中を覗き込み、ぎゅうぎゅうだ。
焼きあがったマドレーヌはちょっと焼きすぎたのか表面が茶色になっていた。
「焦げちゃった...?大丈夫かしら」
「でもほら!中見て。ちゃんと火が通ってるわよ」
「大事なのは味よ、味!」
「ごくっ...」
そして、私達は一斉にマドレーヌを口に運んだ。
「「「「......」」」」
沈黙の後、ごくっと1口飲み込むと、4人は目を見開いた。
「おっ美味しいわねこれ...」
「うん、バターをあれだけ使った甲斐があるわ」
「生地も甘くてしっとりね。いくらでも食べちゃえそう...」
「おいしっ...」
バターを沢山使った割には軽く、しっとりしていて食べやすい味だ。
私は手が止まらず結局10個も食べてしまった。
「ふぅ...美味しかったわね。あ、そろそろ持ち場に戻らないと、フィオネ、また今度何か作りましょうね」
「あ、うん!」
結局失敗かと思ったマドレーヌは大成功だった。
それから3時のおやつにちょくちょくマドレーヌが作られるようになったのは言うまでもない。
面白いと思ったら☆とブクマ、コメント等してくださると嬉しいです!




