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11話 隠蔽

「この辺だったら誰もこない...はず」


両手で鍋を抱えながら長い階段を降りる。

私は色々悩んだ末、この衝撃的な味のスープを地下に隠すことに決めた。


厨房は綺麗に片付け、野菜の皮なども捨ててきた。

しかし、スープはすごい刺激臭だ。これは捨てたら1発でバレる。


私はボロボロの城壁のそばに鍋を置いた。何日か置いておけば少し匂いが治まるのでは無いだろうか。

そのときにもう一度取りに来よう。


「ふぁあ...」


あくびが出る。外を見ると、空も明るくなりかけている。


やばい。ヘリンが起きる前に戻らないと。私は急いでその場から立ち去った。そのとき、背後から誰かが見ていることにも気付かずに...




✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼




「おはよう、フィオネ。そろそろ野菜を切るのも慣れたか?今日は君にトマトスープを作ってもらう」


スープ隠蔽事件から5日、私はその日初めての調理を任された。

しかもまたあのトマトスープ...


ライアンがわざと怒らず自分を試しているのかとドキドキしたが、ライアンは普通に私にレシピを教えてくれた。


「この紙に書いておくから後で分からなくなった時に読め。今日は口頭で教える」


トマトスープの材料は、トマト、玉ねぎ、きのこ、人参だ。玉ねぎは細く切り、人参は乱切りにする。

そして切った具材は基本水にさらしておくと良いらしい。

きのこは手で細かくちぎり、トマトはボウルにいれてあらかじめ潰しておく。


具材の準備が出来たら鍋に水を入れ、火にかける。


次に重要な味付けだ。

ライアンはまな板の上に小さい黄色のカブのような物を置いた。


あれ...こんな野菜入ってたっけ?


「これは生姜と言うんだ。フィオネ、これをすり器ですったら全部お湯に入れろ」


生姜をすり始めると、いつかの刺激臭がその場に漂った。これ...入れて大丈夫なの?


「次はチキンスープだ。昨日鳥の骨を煮込んだ残りがある。これを出汁に使うぞ」


ライアンは厨房の奥の大鍋から透明なスープを持ってきた。

白金色に輝くスープを生姜の入った鍋に入れた途端、それまでの刺激臭が一変、食欲をそそる美味しそうな匂いに変化した。


「具材を入れて、あとは塩で味を調整すれば完成だ。フィオネ、味見してみろ」


ライアンは取り皿にスープを取り、こちらに渡してくれた。

取り皿にはあの初めて食べた時と同じトマトスープが入っていた。


「...美味しい」


あれだけ簡単だと思ってたスープを作るのに、私はかなりの手順を無視してしまっていたようだ。


「それは良かった。ちなみに塩はこの瓶。生姜はあっちの棚に入ってるからな。さ、そろそろ昼食だから配膳手伝ってくれ」


「あらフィオネ、これまさかあんたが作ったの?」


背後から声をした方を振り向くとそこにはヘリンが。その後にも続々と使用人達が食堂へやってくる。


私は急いで配膳し、すぐにヘリンの横に座った。

出来たてのスープを皆の器に盛る。


「ふーん、料理長のには適わないけどまあまあね」


ヘリンは言葉こそ素っ気ないが、柔らかい口調で微笑んで見せた。


「良かったな、フィオネ。明日も調理を手伝ってくれ。教えないといけないことが山ほどあるからな」


そう言ってライアンは私の頭を撫でる。

その瞬間、自分の心が見えないエネルギーで満たされていくのを感じた。


私はここに来て、初めてこれからやりたいことを見つけたのだった。












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