1.100年経っても変わらず
何故か話そうと思わないと声が出ない作者です。
「お、雪だ。綺麗~」
雪玉作ろうかな…でも氷玉の残り結構少なかったからな〜
「うん、氷玉にしよ。」
〈作り方〉
まず、雪を圧縮して雪玉を作ります。
当たると痛そうなのがベストです。
次に 密度、透明度を高くします。
そして…あ
カラッカラッ
どこからか馬具と飾りの音がした。これから遠征に行くのかもしれない。きっと私の幼馴染のルイもどこかにいる。ルイは魔法騎士だ。でも、凄い寂しがり屋の冷え性だということを私は知っている。
そういえば今月分の、温玉渡してない気がするなぁ…
間に合うかな、馬の脚に追いつくほどの脚力は素足には到底不可能だ。しかし、この世界には魔法なるものが存在する。そして彼女、フィーネ自身もそれらを行使できる者の一人だ。がんばれば追いつく可能性もある。
「よし、走ろ」
レッツゴー
まあ、なんとかなるでしょ。
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でも、それは空想でしかなかった
なんとかなる、だなんて身勝手な期待だ。
結果、渡すことは出来なかった代わりにフィーネは絶望を目にすることとなった。
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連れ行く群の中、一人の男が発狂した。後に敵国のスパイだと判明した男の目は充血し唇は異様なほどに青い。そして、一つの小競り合いの言う名の争いが始まっていくのをフィーネは目にしていく。軽率に、いとも簡単に誰かの血が飛び散っていき、なかには仲間をかばって魔法に打たれる者もいた。戦いの外れで小さな血だまりに倒れている人もいた。そしてそれが誰のものなのかはすぐに分かった。
綺麗な黒髪に紅は凄く映え、薄く積もった雪が彼の存在を強調させる。
救いは感じない、もう遅かった。そう言われている気がした。
ルイの腰辺りから大きな血溜まり、彼の息は浅く荒かった。
「…ルイ?起き、て?」
声がすべてを否定したいがために震える。嘘だと言ってくれと訴えてくる。
しかし、彼の口から救いの言葉が発される事はなかった。
「フィー、来ちゃったの?遅くないよ、逃げて」
「嫌」
鞄から作りかけの雪玉を取り出して今もなお暴れ続ける兵に向けて投げつけた。雪玉は本来、雪を固く丸めただけの白い球だが、少しの水分と多量の雪で固めたものはそうはいかない。しかも魔法付きだ。作りかけでもその欠片に一瞬でも触れると跳ね返されたり、突き刺される。
そうやって雪玉を取って投げつけるを繰り返しているとルイが私の袖を掴んだのに気付いた。
そして笑ってこう言った。
「ごめんね…今日は兵じゃないのに。…ゲホッ、あとは任せたよ、フィー。」
その後、ルイは何も言わなくなった。
「嘘だ」
嫌だった、たった一人の親友がこの世から消え去るのが。怖かった、またひとりぼっちになってしまう自分を想像するのが。強い魔力も氷適正の高かった自分の存在も、氷は普段は生活魔法の類で使われることが多いがそれに特化した者は戦場へと駆り出される。その一人がフィーネだ。両親からも敬遠され同性の友人は自分を恐れて接しようとしない、そんな中でルイだけは優しかった。彼の前ではただのフィーネになることができた。怖いことがあっても彼が暮れる言葉が救いだった。あたたかな掌で頭を撫でられるのが嬉しかった。「美味しいね」と食べるご飯は初めてルイがくれた宝物みたいな時間だった。だからこそ、憎い。もうそれが全て叶わないなど許せるはずもなかった。
何が憎かったのか何が許せなかったのか それがあの時は私の戦力となった。
私は泣きながら暴走した。魔力暴走だ、記憶には薄い。しかし、見事フィーネは敵全滅を果たした。当時徴収されていなかったただの氷娘がその争いに終止符を残したこと、敵国が自分を恐れて不可侵を提案してきたことで国は私を英雄と言った。その言葉は私を悲しみの底へ突き落としてくれるというのに。
皆が憧れる英雄の称号なんて私には要らなかった。
私は森に引きこもった。誰も此処に来れないように結界も張り、もう一度ルイに会えないかと魔法を研究し尽くした。でも無理だった。分かっていたけど諦めたくなかった。どうにかどうにかとやっていると魔法を自分で作ることが出来るようになっていた。
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あれからどれくらいのの年月が経ったのだろうか。
そうやってずっとやっていると自分の容姿がほとんど変わっていないことに気づいた。
嬉しい半分怖かった。
今、外はどうなっているのだろうか。
外もわからなければ何もできないと、状況把握のために精霊を呼び出した。
「あら久しぶり。いつ見ても人の子は可愛いわね。」
「ありがとう。で、今何年?なぜ私は老けていないの?」
「そんなの自分にに聞きなさいよ。あなたが私と契約して力が倍になってあの子のことばかり考えるからそうなるのよ」
「え」
クイーンは得意げに私の額に軽くデコピンをしてきた。
クイーン、彼女が自分は女王だと自称するからそう呼んでいる。信じる気はない、何故なら書物に書かれていた性格とまるで違うのだから。
「あの子に逢いたいのでしょう?100年以上も森に引きこもって彼のために力をそそいでいたら、まぁ、どこかでつながるわよね…教えてあげたのだから代わりにクッキーを頂戴な」
「フィーネ、私の愛しい子供たち。澄んだ愛を注げばいつか願いは叶うわ、それがいつになるかは私にも分からないのだけれどね」
久しぶりに名前を聞き、涙が出てきた。
「…居るの?」
出し方すら忘れていた声は見事に掠れていた。
「奴隷屋ね」
「ほんとに?」
何故また前世と同じ奴隷屋に居るのか。そんなに神様はルイが気に入らないのか。
「えぇ…私も見つけた時は目を疑ったわ。ったく今度会ったら思いっきり殴りましょうね。」
ただの殴りがめちゃくちゃ怖そうに聞こえるのは気のせいだろうか。
「それでね、明日オークションがあるわ。そこにルイがいる。お代はサファイアとかが良いと思うわ。主催者が宝石商だから。」
流石、精霊女王…
「場所はーー13時頃の教会の地下室ね」
教会の地下室?! そんなのあるんだ…っていうか作ったんだあの祭司様。
へぇ〜
祭司様?え、いいの?よく雷落ちなかったね??
えー何それー
神の代弁者が?祭司が?!
いやいやありえない
じゃあ誰?
今の祭司?…って誰
あ、そういえば祭司の息子って、いや、そしたら歳が…
「あ」
「あれか息子か」
「フィーネちゃんご名答よくできました」
祭司の息子は色事が大好き(オエッ)で散々祭司にギャーギャー言われてた。
そして私の知ってる祭司が「こいつに子供ができたらそいつもまた…あー考えるのが嫌だ」って言ってた気が…
「クイーン」
「なあに?」
「殴り、もう二人追加で」
「なにそれ。ストレス発散大会かしら」
「なんでもいいから明日行きます。」
「はいはい。ちなみにあの子前世持ちだから、よかったわね」
「「全くもってよかない」」
その時フィーネの顔が真っ赤だったことは精霊女王により多くの精霊に伝わり笑い話となったとさ。
クイーン:っていうかあなた自分が今何歳なのかわかってんの?
フィーネ:知るわけないじゃん。大体、17歳くらいから数えてないんだよね…あははは