プロローグ
「おやすみ、お兄ちゃん」
「おやすみ、結梨愛」
俺の胸に顔を寄せてまどろむ妹は、幸せそうに、不安そうにも見える表情をしている。
時々、口の形だけでむにゃむにゃしてくるので、その小さな震動がものすごくこそばゆい。
お返しとばかりに結梨愛の頬をぷにぷにしてやると、「んふぅ……んっ//」と、か細いあえぎ声が聞こえてくる。膨れっ面になった結梨愛は、ぎゅっ!としがみついてくる。
「ひゃうっ?!」
突然の不意打ちに変な声が漏れてしまう。彼女から発せられる仄かな温もりが、肌を通して心臓まで届き、鼓動はさらに速くなる。そして結梨愛は今度こそ満面の笑みを浮かべ、頬を俺の頬に擦り付けてくる。
「?!?!?!?!?!」
どうやら今日も僕の負のようだ。無駄な抵抗はせず、大人しくしていよう。だが、結梨愛のとろけるような瞳からは逃げないといけない。
僕まで理性が飛びそうになるから……。と思った矢先、なぜか結梨愛の頬が目の前に…………?
んんんんんんんんんんん?!
「ちょっ、結梨愛ぁぁぁ?!」
「……お兄ちゃんの唇ちょーだい?」
なななななななななななななななな(省略)
結梨愛の顔は窓から入る月の光によって薄く照らされている。ほんのりと上気し、色付いている唇は万物の美しさを凝縮したようなものだった。触れてみたい、そう思わない人などいないだろう。そして極め付けは瞳だ。翡翠よりも深く鮮やかなライムグリーンの瞳には、得も言わぬ神秘性が宿っていて、視る者を魅了する。
その深く明るい緑に一度取り込まれると、もう戻ってくることはできない。
………ああ、もうダメだぁ……体が硬直してしまっている………。
いや、男としては全然嫌じゃないし、むしろ求めてしまうんだけれども!!!何しろシチュエーションがヤバい……。薄暗い部屋の中で妹に抱きつかれ、キスをせがまれている。流石に二十歳の僕でも興奮せざるを得ないけど!
いや、双方の合意があればいい、のか……?
って、待て落ち着け流石に14歳の少女に手を出すのは……。………そうだ、僕は妹を侵すのではなく、守らなければならないのだ。
だから、俺は…………っ?!!!!!!!!
「結梨愛ぁぁぁぁ……お助けぇぇぇ…………」
わぁぁぁぁぁ!!結梨愛の舌の感触が頬にぃぃぃぃ……。あふぅ……ふわふわふわわわふわ…………。
「……も、もう…りゃめぇ……」
「えへへぇ//お兄ちゃんだ〜いしゅき♡」
その夜、俺の唇に重なる温もりは消えるどころか、段々と熱みを帯びていった。
ちなみに服は着ています。真夏の夜なので、2人ともシャツ1枚だけなわけなんだが……。