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「アンドリアーノさん! どうしてここに!?」
「理由は後で話します。何があったのか詳しく話してください」
「で、でも……!」
私は素早く鞄から筆記用具を取り出し『誰とも話すな』と言われています、と書く。するとアンドレアーノは軽く微笑し、「大丈夫。あなたを監視していた人はあそこで寝ていますから」
アンドレアーノが指した先を見ると、見知らぬ男が建物に寄り掛かってぐったりとしている。
私は安心して数分前起こった事を話す。状況を話しているうちに少しずつだが自分の気持ちが落ちついてきた。
「イブちゃんを一人にしてしまったのはあなたの失敗です。ですが今はイブちゃんがどこにつれていかれたのか。どうしてイブちゃんが誘拐されたのかを考えるのが先でしょう」
私は路上販売員の女性から渡された紙片をアンドレア―ノに手渡した。アンドレアーノの紙片を広げ、大きく目を見開いた。
「アッテンブロ―庭園……」一言だけつぶやき、「イブちゃんが誘拐されたのはリイサさん、あなたが原因かもしれません……」
「それはどういう意味でしょうか」
「あなたが記憶を失っていた時期――ロマリア帝国に反抗した残党たちが処刑された場所だからです。このアッテンブロ―庭園という名前を知っているということは、あの当時の生き残り。もしくは知識を持っている輩といってよいでしょう」
「でも……私はロマリア帝国に反逆した側のはずですよね? どうして私が関係するのですか?」
「……。確かアッテンブロー庭園、現在は旧市庁舎です。ここからそう遠くはありません」
アンドレアーノは強い口調で私に言った。
「とにかくイブちゃんを助けるのが先決です」