62
近くの日陰に腰を下ろした。イブは美味しそうにレモネードを飲んでいる。
「イブ、銀行にお金を下ろしてくるからここで待っていてくれる」
「分かった。でもリイサさん、銀行の場所分かる?」
「大丈夫よ。駅前にあるんでしょ。じゃあ十分くらいで戻ってくるから待っててね」
私は飲み干したレモネードのごみを業者の人に渡し走り出した。
走って数分で銀行に到着し、入店する。カウンターで自分の証明書を提出し、引き出し金額を行員に告げる。
数分ほどで行員が私の前に現れ、要求した金額を持ってきた。私は行員の女性にお礼を言い、イブの元に走った。
息を切らしながら、戻るとイブの姿がない。
あれ? イブがいない?
警告を発する早鐘のように心臓が高鳴っている。
「ここにいた女の子どこに行ったか知ってる?」
帽子を深くかぶり、行きかう人をじっと見つめている路上販売員の人に尋ねる。路上販売員の人は帽子を上げ、私の顔を見た。路上販売員が女性だということは私は初めて知った。初老の路上販売員はゆっくりと口を開いた・
「あんたが離れた後、あの子のお母さんという人がやってきて、連れていったよ」
「え!?」
「後、これ。戻ってきたら渡してくれって」
ポケットから取り出したのは、小さく折りたたんだ一枚の紙片だった。
私は受け取り折りたたまれた紙片を開いた。
見た瞬間全身から血の気が引く。
さらに考えられないくらいの汗が背中から滲んでくる。
頭が真っ白になった。
どうしようどうしようどうしよう。警察は駄目だ。紙に書いてある。
どうすればいいの?
私はその場で立ちつくすしかなかった。