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駅を出ると、先ほどよりも暗さが増していた。駅に向かう人は多いが、私のように出ていくあまり多くない。クレージュ駅周辺は街灯が設置されていて、比較的明るい。駅は絢爛豪華と言わんばかりの造りで、周辺の道路は綺麗に設計され植林も等間隔で植えられている。
クレージュ駅周辺は非常に緻密に作られていることが分かる。それにも関わらず周辺はどこか殺風景でまるで人が作ったのでないようなくらいだ。
官公庁街だからだろうか。
汗でべたついた首元に心地よい風が吹く。
私は冊子を出し先ほどの女性が教えてくれた『大漁』というお店に向かうことにした。
方向感覚がない私は冊子を縦に横に、首をひねりながら『大漁』という紹介されたお店を探していた。
駅から放射線状に広がっている、中央の道は道路に沿って何軒もの飲食店があり、どこのお店もにぎわっていた。街中を歩いている人も制服姿の男性と女性が多く、私のように私服姿の人はあまり多くない。駅前とは違い非常に活気がある。
『大漁』というお店は大通りから少し外れたところにあるようだった。
様々な店から出てくる料理の匂いやアルコールやたばこ。街じゅうを覆っている人間の体臭の中に、どこか懐かしい、胸を熱くするような匂いがしてきた。
思わず地図から目を離し、数十メートル先を見た。
私は自分の考えがまとまらないうちに、走り出していた。