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その後、二階の外国文学の本を数冊、そして雑誌等を購入した。
購入した本は計五十冊ほどで買い物かごはいっぱいだった。重たそうに二人して運んでいる姿に店員さんが地下一階にある会計をするところまで運んでくれた。
「こんなに本を購入してくださるお客さんはあまりいないんですよ。作家さんか何かしている方ですか」
「私は作家ですが、この本を読むのは私じゃなくて、あの子なんです」
雑誌売り場で政治経済の雑誌を読んでいるイブを見る。
「凄いですね……」
「本人は本を読むのが好きみたいです」
「もしよろしかったら配送サービスを行っていますのでいかがでしょうか」
私は山のように積み上がった書籍を見て「お願いします」と頼んだ。そしてイブを呼び書類に自分の住所を書かせた。
「帰りの馬車の中で読む」と言い、五十冊にも及ぶ本の中から選んだのは、私のデビュー作だった。
大事そうに私の書いた本を抱えているイブを見て、感慨深い気持ちになる。
まさか絶版になったはずの私のデビュー作が売っているとは思わなかった。三年前、当時あまりに売れなくて絶望していた私に、教えてあげたい。