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数分歩いていると、一冊の本を読んでいるイブの姿を見つけた。足元に置いてある買い物かごの中にはすでに数冊の本が入っているのが見える。

 何を読んでるんだろ。

 こっそり後ろから近づいて驚かせることにした。わき腹をつついてやろうか、それとも耳元で囁いてやろうか、いたずら心に火がつく。

 背後にいてもあまりに真剣に読んでいるため、私の存在に気づいていないイブ。

 どんなの読んでいるんだろ……。ちょっとだけ確認。

 イブの頭の上から見下ろすように、本の内容を見る。

 あれ、この文体とこの文章、どこかで見た記憶が……。私はおぼろげになっている記憶を思い出しながら、読み始めた。


『ナターシャは普段は下ろしている髪を一つにまとめました。部屋の隅に置いてある姿見はいつもと別人のような自分が映っています。

普段ナターシャはズボンにTシャツなど動きやすい服しか着ません。ですが今日は違いました。

 少し短めの花柄のスカートに、黒のノースリーブのニット。友人からアドバイスを受けて今日のために購入した洋服です。』


「私のデビュー作じゃん!」

 思わず叫んでしまった。書店内のお客の視線が私に集中する。

「やば……」

「びっくりした……。どうしたのリイサさん?」

「いや……その……私の本を読んでいたからつい……」

「たまたまリイサさんと同じ名前だったから読んでみたの。これリイサさんなの?」

「そう。私のデビュー作」

「そっか。じゃあ」

 イブは読んでいた本を棚に戻すことなく、買い物かごの中に入れて「ちゃんと買って読まないとだよね」



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