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ミッドランドシティの中心部に到着した私とイブは最初に本屋へ向かった。イブにどうして本屋なのかと尋ねると、イブは「欲しい本があるの」と楽しそうに答えた。
ミッドランド駅から徒歩五分くらいのところにある、ミッドランド中央書店という書店に私とイブは向かった。
ミッドランド中央書店。ミッドランド市内で最大規模の本屋で娯楽小説から専門書、外国語で書かれた書物など様々な本を取り扱っている本屋。イブは得意げに私にミッドランド中央書店のことを説明した。
「病院の帰りにいつも寄るからね」
そうか、イブにとって本くらいしか好きになれることがないのかも……。
「ほら。早く早く」
イブは楽しそうに私の手をひっぱり急かそうとする。
「ちょっと待って。走っちゃだめだって」
楽しそうにはしゃぐイブを見て、自然と顔がほころぶ。
周りからはどうみられているのだろうか。
歳の離れた姉妹と思ってもらえているのであろうか。
妹というのがいなかった私にはとても新鮮で胸の奥がじんわりと熱くなる。
いや――。
私はふと足を止めた。
いや、私には妹がいた。戦乱で失った妹が。まだイブより幼く、言葉もはっきりと喋れないくらいの妹。
どうして忘れてたんだろう……。
胸元、背中から汗が嫌な汗が滲んでくるのが分かる。
「リィサさん?」
「どうしたのイブ?」
私はすぐに平静を繕う。
「なんか調子悪そうだけど、ちょっと休んだほうがいい?」
「なに言ってるのよ。全然大丈夫よ」
「でもすごい汗だよ?」
「大丈夫大丈夫。それよりあとどのくらいで着くの?」
「もう少しだよ。ほらあの古い建物」
イブは遠くの建物を指差した。