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少しずつ彼との生活にも慣れ、彼が敵ではないことが理解できるようになってきていた。
彼と一緒に住むようになって一年ほどたったとき、私は彼の仕事に助手として同行することになった。
助手として彼と一緒に働くことは楽しかった。記事の書き方、取材の仕方などを一通り学ぶと、自分で記事を書くこともあった。
そんな日が日常的になっていったとき、私はあることに気づく。
朝起きて彼の顔を見るだけなのに心が躍り、声を聞くだけで胸が熱くなり、一緒に食事をするだけなのに、どこか恥ずかしい。
仕事で彼と一緒出かけるのは嬉しいという反面、心臓が激しく鼓動し身体から火を吹いているようになぜか火照る。原因不明の奇病になったのではないかと心配したが、ある日解決をする。
それは彼が担当していた雑誌を読んでいたときだ。
十七歳の女の子が、同学年の男の子を見ているだけで恥ずかしくなり、どうしようもなくなるという相談を誌上で先生といわれる女性に相談をしていた。
私は食い入るようにその記事を読んだ。その結果私は彼に恋をしていることが分かった、
確かに私の症状は十七歳の女の子症状と同じだ。
『とりあえず告白をしなさい』先生といわれている人は十七歳の女の子にそうアドバイスをしていた。
でも私は――。そう思い雑誌を閉じた。
今こうして彼と一緒にいるというだけで嬉しい。
でもいつの日か、彼と一緒になれたら――いいな。
そう思うようになっていた。
そして忘れもしない五年前のあの日がやってくる。