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次の日私はイブを十時に迎えに行った。最初店の方に顔を出してみることにした。
「こんにちは」
店のドアを開けると、一人の見覚えのある後ろ姿がいた。
「アンドレアーノさん?」
私が声をかけると、「こんにちは」と優しい微笑で返してくれる。アンドレアーノは朝食を食べていたようだった。
テーブルの上にはトーストを食べたと思われる皿、それにコーヒーが半分ほど減っている。読んでいた新聞を止め、「今日はイブと街へ行くんですよね」
「はい。あまり遅くならないうちに帰ってこようかと思っています」
「イブの体力面の心配もありますしね。それとこれを渡しておきましょう」
アンドレアーノがテーブルに置いたのは、木で作られた小さい親指ほどの人形だった。
「これは?」
「お守りですよ。午後から雨が降る可能性がありますので、雨が降らないようにするという竜人に古くから伝わるものです」
「ふううん……」
「竜人の予知能力を甘く見ないでください。優れた竜人は一週間先の転機を予測するのも可能なんですよ」
「アンドレアーノさんはできるんですか」
「いえ……。私はできませんが、今日明日くらいの予測ならできますよ」
「アンドレアーノさんの予測がどれくらい当たるか分かりませんが、頂いておきますね」
私はハンドバックの中にアンドレア―のから貰ったお守りを入れた。
「リイサさん信じてませんね……」
「いえいえそんなことないですよ~」
ガチャリとドアが開き「リイサさん!」と自分を呼ぶ声がした。