40
ウエイトレスが持ってきたのは、分厚い肉のステーキだった。それにライス。ウエイトレスが去り、「では頂きましょう」アドリア―ノは手慣れた手つきでステーキを切り始めた。
肉を切りだしたところからじわっと脂がにじみ出てくる。焼き加減はミディアムレアといった具合だろうか。私は切った肉を口に入れた。
えっ……なにこれ……。
口の中で数回かみしめただけで、飲み込めるほど柔らかくなる。口の中で肉の味を堪能したいにも関わらず、思わず飲み込んでしまう。
「おいしい……」
思わず感想が口から洩れてしまった。
「そうですか。初めてここに連れてくる人はみんなそんな感想を言いますよ」
アドリアーノは微笑んだ。
「さて、どこまで話しましたかな……」
「ロマリアの兵から助けてくれたのがここの四代前の主人に助けられたっていうところまでです」
私は切ったステーキを口の中に入れた。
「かくまってくれた主人は大けがをしていた私を看病し、しばらくの間従業員として雇ってくれました。ですが残党狩りで仕方なく、この地を去らなければなりませんでした」
「だったらどうしてまたここに戻ってきたんですか」
「私がこの地を去ってから大体二十年くらいしてから、ロマリア王が死んで残党狩りもなくなったからです。今は従業員として働いてはいませんが、こうして週に何回かここで料理を食べさせてもらっているんですよ。私の身の上はそんなところです。では今度はこちらからいくつかお聞きしたいことがあります」
アドリアーノは再び残っているステーキを口に入れた