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戻ってきた初老の男性は地図を広げた。地図の大きさはテーブルが入りきれないほどの大きな地図だった。
「まず、カルツォン城跡は現在のミッドランドシティ駅です。今現在当時の歴史が残っていることはないでしょう。そしてラウラ旧市庁舎前はここ、ポルト町三丁目周辺です。ここも行ってみれば分かりますが、何もない畑と集落になっています。最後にエッセル教会は、ラウラ旧市街から離れた所、ロマリア軍ミッドランド支部になっています」
「あの……つまり、行っても仕方ないってことじゃあ……」
私はペンを走らせていたメモ帳から手を離し尋ねる。
「残念ながらそういうことになります。おそらく行ってもその当時の歴史は分かるようなものは残っていないでしょう。ただ分かっていることは――三か所とも内乱の際、激戦だったということです……」
初老の男性の表情は少し暗くなったように思えた。
「圧倒的な力を誇ったロマリア軍は、蜂起した妖精と魔族の連合軍をカルツォン城、現在のミッドランドシティで蜂起しました。ですが、圧倒的な技術力と組織力をもった人間に鎮圧させられてしまいます。カルツォン城から生き残った者はラウラ旧市庁舎で、再度勢力を整えようとしますが、ロマリア軍の強襲を受け失敗。這う這うの体でラウラ旧市街まで逃亡することになります。御覧なさい。カルツォン城跡。ラウラ旧市庁舎前、エッセル教会とどんどん西側に向かって行っていることが分かるでしょう」