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「レイモンドはどうして虐殺の歴史を隠蔽し、捏造したのでしょうか」
初老の男性は外の木々を見てどこか悲しそうな視線を向けながら、言った。
「的確な答えというのは分かりません。あくまでも推測ですがレイモンドには妖精、魔族、竜人に対する強い恨みや憎しみ。そして嫉妬。また国内の基盤を盤石にするための政治的な利用など様々なものに可能性があるでしょう」
「魔族や竜人は確かに虐殺でほとんど、いえ……すでに絶滅してしまっています。ですがその手記では妖精も粛清の対象となるといっています。ですが妖精はまだロマリア帝国内には人間よりはかなり少ないですがいますよね。粛清などはされていないのでは」
「歴史上ではそのようです。ですが差別は残っている。あなたも感じたことがあるのではないですか」
「……確かに……そうですね」
魔族とエルフのハーフである私は、外見は比較的一般的な人間たちと変わらない。だが耳が長いこと。瞳が緑色ということはエルフの強い特徴を受け継いだ。
今はあまりないが、周囲の人間たちの目。エルフだからというだけで差別的なことを言われるのが非常に苦痛だった。
重たくなった空気を払しょくするように初老の男性は言った。「話が逸れてしまって申し訳ありません。それでカルツォン城跡。ラウラ旧市庁舎前、エッセル教会の場所でしたね。ちょっと待ってください。ミッドランドシティの地図を持ってきますね」
席を立ち、『関係者以外立ち入り禁止』と書かれている通路の方へ歩いて行った。