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「……ブライシー三世亡き後、継いだのは息子のレイモンドでした。レイモンドは反乱を引き起こした者はすべて皆殺し。それは家族親族内乱に関わったもの全て皆殺しでした。それはエルフ魔族竜人、そして反乱に加担した人間、または反乱に加担をしたと疑わしき人間もです。
そして反乱を完全に鎮圧し、再びロマリア帝国を統一したレイモンドがしたことは、竜人、魔族の浄化です、一部のエルフ族だけは人間の傘下に入ったこともあって免れるこができました。
ですが嘆かわしいことにレイモンドは内乱が起こった事実、内乱が起こったとされる場所の破壊、そして魔族と竜人の二つの民族を浄化したという事実を全て抹消しました。そして、真実の隠蔽と、偽りの歴史を正しい歴史として世に広めたのです」
「あなたは――どうしてそこまでの歴史を知っているの? あなたの言ったことが嘘とは言いませんが、その確固たる証拠がない以上、妄想としか言いようがないのでしょうか」
私はつい自分がつい感情的になってしまったのを反省し、目の前の男性に向かって謝罪した。
初老の男性は「いえ。まったくその通りです」と軽く微笑しながら、一冊のメモ帳を自分の内ポケットから出した。
「先ほど歴史の隠蔽と抹殺、そして現在偽りの歴史が広まっているといいました。このメモ帳はおそらく、歴史が抹殺される直前、そして自身が捕まる前に書いたと思われるメモ帳です。博物館の奥に保管されていました」
「拝見してもよろしいでしょうか」
「どうぞ。ですがおそらく読めないと思いますよ」
初老の男性は私の前にもうボロボロになっているメモ帳を渡してくれた。初老の男性の中指に銀色の指輪が光った。