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「昔、このロマリア帝国は四つの国に分かれていました。まず北部の東側を支配していたのが人間が治めていた現ロマリア帝国です。そして南部の東側を支配していたのが竜人が現ミッドランドシティ周辺のバルソット王国。そして南部の西側を支配していたのがエルフの国であるヴェルジュ連合国。そして北部の西部が魔族の国だったリードルフ皇国。
しかし周辺諸国に比べて文化と文明を著しく発展したロマリア帝国はリードルフ皇国、ヴェルジュ連合国、バルソット王国、この計三つの国を亡ぼしました。そして統一をしたのが、ロマリア帝国のブライシー三世です。
しかし三つの国の生き残りはその後、反ロマリア王国を掲げ、反乱を引き起こしました。その時三つの国を代表して首魁になったのが魔族の国であるリードルフ皇国の生き残りで、第一王女だったエミリア・シュレッターでした」
「えっ……」
何? 私の名前が出てきた? どうして? 私そんなこと知らない……。
「どうしました?」
「あ、いえ……聞き逃したので、もう一度言ってもらえないでしょうか。三つの国を代表して首魁になったのは」
「エミリア・シュレッター第一王女です」
でも――私はここにいる! 私はぐっと堪え尋ねた。
「でも、そのような歴史があったとは聞いたことがないのですが」
初老の男性は顔を俯きかけ、残念そうに答える。