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天井の大きなガラスが館内を明るくさせていた。館内はあまり大きくはないが、外観の古さは感じられない。
少し離れたところ売店があり、店員は暇そうに大きなあくびをしていた。博物館で働いている初老の髪の毛に少し白髪の混じっている学芸員の男性が私を見て、軽く会釈をする。私もつられて会釈をし「あの」と声をかけた。
「はい。なんでしょう」
私は自分が文筆家をしていること。そしてカルツォン城跡。ラウラ旧市庁舎前、エッセル教会という三か所の遺跡を探しているが。ミッドランドシティにはなかったこと、この博物館にミッドランドシティの歴史が分かるような展示物はないか尋ねた。
「こちらについて来てください」
私は初老の男性に連れてこられたところは、博物館内で机と椅子が用意されている休憩所のようなところだった。大きな窓があり外を眺めることができる。
「どうぞお座りください」と言われ私は初老の男性と向かい合うように椅子に座った。そして初老の男性は脇にあった、ブックラックから一冊の本を取り出し、机に広げた。それはロマリア帝国国内の地図だった。
ロマリア帝国は南北と東西の距離に大きな差はない。北は工業が盛んで南は観光や農業といった産業で成り立っている。北部の人間はせかせかして生真面目な人間が多い反面、南部の人間はおおらかでマイペースな人が多いとされている。
初老の男性は指で地図をなぞりながら話始めた。