24
ホテルの朝食をたっぷり食べてから、ホテルを出た。絵具で塗りつぶしたような真っ青な空に、雲一つない良い天気。人通りはあまり多くはないが、海水浴に来たのであろうはしゃいでいる子供の手を左は母親。右は父親が繋いでいる。なんとも微笑ましい光景だった。
ふと――昔のことを思い出した気がした。
私にもああいうことがあったのだろうか――。
隣の店がシャッターを開ける音で現実へ引き戻された。ほぼ同時に向かいの店でもシャッターを開ける音が聞こえる。
「今日もいい天気だな」
「ああ。今日も暑いだろうよ」
隣の店主と向かいの店主は軽くあいさつをすると店の奥へと消えていった。
私は市役所に向かって歩き出した。
市役所までは徒歩で十五分くらいだった。歩いている間にも、気温がどんどん上昇していっているのが分かる。
ミッドランドシティは常夏の地域なのか、いたるところに冷たい飲み物を売っている人がいる。
市役所の前でも売っていたので私はパイナップルジュースを貰い、市役所の庭先の日蔭にあるベンチで飲むことにした。
汗をかいている部分に吹く風が冷たくて心地よい。それにパイナップルジュースは甘い上に非常に濃厚だ。
私はパイナップルジュースの容器をごみ捨てに入れ、市役所の中へと向かった。