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「はいこんにちは」
五十代くらいのかっぷくの良い女性が満面な笑みで出迎えてくれた。
「あの、何日か泊まれるところと、カルツォン城跡。ラウラ旧市庁舎前、エッセル教会がどこにあるか知りたいんですけど」
「じゃあまず泊まれるところから探してしまいましょうね。ご予算とか決めてます?」
お金はいっぱいあるし……。ちょっと条件を高くしてみよう。
「いえ。眺めが良くて海に近いところお願いします」
「ちょっと待っててくださいね」
部屋の奥へ行き、チラシを数枚持って戻ってきた。
「一応、海が近くて若い女の子に人気のところを持ってきたけど。他にもあと十件以上あるから、気にいったところがなかったら、言ってちょうだい。それと……どこを探しているんでしたっけ?」
「カルツォン城跡。ラウラ旧市庁舎前、エッセル教会です」
あまり有名じゃないのかな?
「カルツォン城跡。ラウラ旧市庁舎前、エッセル教会っと」
おばさんは近くにあるメモ帳に走り書きをした後「ちょっと待っていてくださいね。あちらで旅館を決めておいてください」
そう言い残し部屋の奥へと消えていった。
おばさんは部屋の奥で職員たちと何か話しているようだった。
これっさっさと終わる仕事じゃないかも……。
大きなため息をつき、椅子に座り渡されたチラシを眺めた。
五枚目のチラシをみていたとき、先ほどもおばさんが戻ってきた。私がカウンターへ行くと、「申し訳ありませんが、カルツォン城跡。ラウラ旧市庁舎前、エッセル教会の三か所、調べてみたんですが、ミッドランドシティ内にはありませんでした」
「うそ!」
どうして? エーギンハルトが嘘をついていた? いやあれだけ大金を出しておいてわざわざ嘘なんてつくはずはない。
これは……長居をしなくてはいけなくなるかもしれない……。そんな気がした。
なんでこんな大事なことを事前に言ってくれなのよ!
舌打ちをし、下唇を噛む。私の態度に「本当に申し訳ありませんでした」とおばさんはこれでもかというくらい低調に謝った。
「ああ! いや……全然大丈夫ですよ! こちらのミスなんで。それで泊るところを長期で泊まれてあまり高くないところに変更してください」