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「お姉ちゃんの目、緑色で宝石みたい」
「お姉ちゃんね。エルフとのハーフなの」
罪悪感で胸がチクリとした気がした。
エルフとのハーフ――。まあ嘘はついてない。
「そうなんだ! だから髪の毛も金色できれいなんだ!」
「でもあなたの栗毛色の髪の毛も綺麗で羨ましいわよ」
「えーそうかなぁ……。あたしもお姉ちゃんみたい髪のほうがよかったなあ……。あれ?」
頭を二、三回降ると結っていた、ヘアピンが床に落ちてしまい髪がほどけてしまった。
「もうあなたは……結ってあげるから後ろを向きなさい」
母親らしき女性が女の子に後ろに向かせるように促すと、女の子は「はーい」と言って素直に後ろを向いた。女の子の顔はどこか楽しそうにみえる。
母親と列車に乗って出かけることへの高揚感なのか、それとも構ってもらえているという嬉しさなのか――はたまたそれ以外なのか、私には分からなかった。
女の子の母親はバックから、くしを出し、栗毛色の女の子の髪の毛を上から下へゆっくりととかしている。
髪を結ってくれる――髪の毛と髪の毛の間に母親の細い手が入り込んでくる感覚がとても好きで、よく母親にせがんだのを覚えている。
「どちらまで行かれるのですか」
私は女の子の髪を結っている女性に声をかけた。
「この子の祖父母に会いにハインツブルグまで行くんです」女性はバックからゴムを取り出し、後ろ髪を一つにまとめた。
「終わったわよ」
女の子は前に身体を振り向かせ、何かを思い出したかのようにスカートのポケットから取り出し、母親らしき女性に手渡した。
「これもつけて」
女の子の手のひらに載っていたのは、アヒルのヘアピンだった。
「どこにつければいいの?」
「じゃあ、前につけて」
アヒルのヘアピンを女性は手に取り、右の眉毛よりも少し上の前髪の部分に前髪につけた。
「お姉ちゃんどう?」
「可愛い。よく似合っているよ」
「えへへ。ありがと。ねえ、お姉ちゃんはどこにいくの」
「ミッドランドシティよ」
「ミッドランドシティってどこ」
女の子が母親らしき女性に尋ねる。
「ハインツブルグからずっと下にいったところにある大きな町よ。お仕事で行かれるんですか」女性が私に問いかける。
「取材がてら行かないといけないんです」
「失礼ですがお仕事は何をしているんですか」