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「……さん」、「お客さん」
低い野太い声の人間が私の肩をゆすっていることに気づいた。
「……ん……」
重たい瞼を力いっぱい開くと、何者かが私の前に立っていた。
紺色のダブルのスーツに制帽。目元の皺がチャームポイントのような初老の男性だった。
「終点ミッドランドシティに到着しましたよ」
初老の男性は微笑を浮かべる。
「ごめんなさい。すぐ降ります」
私は素早く荷物を片し列車を出た。 時刻は午前十一時に近かった。
時間もお平日の昼間だからなのか、人の数はあまり多くない。ただ焼けるような暑さでまるで太陽を連れて歩いているようなじりじりとした暑さだ。
泳ぐにはもってこいかもなー。
まあそんな時間はないか……。
側にある駅のベンチに座り、エーギンハルトからの渡された指示書を見る。指示書は全部で三枚。一枚に三か所ずつ巡ってほしい場所が書いてある。私は確認する意味でもう一度目を通した。
『帝国内の九つの歴史史跡を回ってください。まずミッドランドシティでは、
①、カルツォン城跡。
②、ラウラ旧市庁舎前。
③、エッセル教会。
以上三か所を廻ってください。廻る順番はどのような順番でもよいですが、小説として執筆をする際には①から③まで順番に書いていってください』
三か所か……。それに逆の立場ってどういうこと?
どこにあるのか全く分からないけど。まあ、なんとかなるでしょ。
それに観光地っぽいところばかり、もしかしたら予定より早く終わるかも。とりあえずさっさと宿を探して、もうお昼が近いしごはんごはん~。
私はベンチから勢いよく立ち上がり、改札口近くに併設されているであろうお客様相談室へ急いだ。