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「お疲れさまでした。主人より駅まで送るようにいますのでこちらにお乗りください」」
オットーとルーカスが頭を下げる。ルーカスは車の後部に回り込み、車の後部座席のドアを開けた。
私がルーカスに礼言うと、ルーカスは片目でウインクをして答えてきた。
やっぱりチャラい……。思わず顔がひきつる。
「それと――」
私が後部座席に乗ろうとしたときオットーが声をかけてきた。
「主人からお預かりしていたものです」
オットーは内ポケットから手紙を渡された。
「ありがとう」
「申し訳ありませんがお急ぎではないなら、少しお待ちして頂けないでしょうか」
「いいわよ」
車に乗り込み、オットーの行く先を見た。
オットーは少し離れたところにルーカスを連れ、一発頭を叩いた。そして痛がっているルーカスに説教をしているようだった。
バレてたんだ……。
私は呟き、オットーに渡された手紙の封を切った。
数分するとオットーが運転席に乗ってきた。
「お待たせいたしました」
エンジンをつけ、車を発進させる。
「大丈夫よ。それよりどうしてルーカスを怒ったの?」
「エミ……いやリィサ様に対する無礼がありましたので」
「まあ、褒められることじゃないけど……。あまり怒りすぎるのもよくないと思うわ」
「……ルーカスはインキュバスなんです」
インキュバス確か、サキュバスと対の存在よね。確か人間の女性を誘惑するっていう。どうして私に色目なんて? ん? もしかして!
「アンネリースとは兄弟だったりする?」
「ええ。よくご存じですね。アンネリースはルーカスの兄です」
「兄弟で働いているのね」
「兄も執事として優秀です。妹のほうもとても優秀だと聞いています」
オーカスは大きなため息をつき、「夢魔なので致し方ないのですが……もう少し魔族として節度をもって行動して頂きたいと常々思っているのですが……」
「そ、そう……」
なんか大変そうね……。でもルーカスの場合、インキュバスかどうかというより、ただの女好きなだけかも……。
車はいつの間にか屋敷を出ようとしていた。
太陽が西に傾きつつあり、あと数時間もたつと太陽の色もオレンジ色に変わるだろう。