17
「じゃあ私はこれで帰るわ」
「分かりました。部屋を出たらメイドがいますので、声をかけてください。作品のほうを宜しくお願い致します」
エーギンハルトは私に向かって深く頭を下げた。
部屋を出るとエーギンハルトの言う通り一人のメイドが立っていた。屋敷に入る際に紹介されたラーラやロミルダとは違うメイド――この匂いは魔族ね。
「メイドのアンネリース=ブリントンと申します。以後お見知りおきを。僭越ながら私が玄関までご案内致します」
うわ! 綺麗な魔族!
真っ白な肌で年齢的には人間の年齢で二十歳くらいだろう。身長は私よりも高く、美少女というよりは美女といった感じだ。
どこかはかなげさを感じる雰囲気と妖しい美貌に、私がもし男性だったらイチコロだっただろう。
背中まで伸びる黒髪に角のようなものは生えてはいないが、お尻に尻尾が生えている。
私はアンネリースの案内で屋敷の玄関まで連れてきてもらった。エーギンハルトの部屋から玄関までの間、アンネリースのことを色々聞いた。
アンネリースはサキュバス族で生まれたときからこの屋敷内に住んでいるらしい。屋敷から外には出たことはないが、今まで出たいとは思っていないと言っていた。
「屋敷の外には執事の者が待っております」
と玄関のドアを開けてくれた。
「またね。アンネリース」
アンネリースに声をかけると、深々と頭を下げ私を見送ってくれた。
屋敷を出るとオットーと執事見習いのルーカスが私を待っていた。