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「小説の執筆、とはいっても事実を元にした小説。つまり歴史的な検証をした上で書いて頂きたいと思っております。加えて恋愛要素も取り入れて欲しいと思っております」
「つまり、歴史的な事実を踏まえつつ、恋愛小説を書いていく。そんな感じで良い?」
「その通りです。リィサ様にはこの国の建造物などを数か所巡って頂きます。行く順番などもこちらの指示した順番でお願い致します。執筆する際もそれらの順番通りに書いてもらえると幸いです」
「なるほど。分かったわ」
「次にギャランティのほうですが、売り上げの四十パーセントとは別途で原稿執筆料と取材費合わせて八百万ルピーほどで如何でしょうか。
マジか……。待遇良さすぎるんじゃないか……。何かほかに怪しいことさせられないのか……?
「ねえ……本当に八百万なの?」
「少なすぎましたか」
「いや……充分よ」
「売り上げに関しては逐次報告させるようにいっておきます。また売り上げの印税は銀行振り込みでよろしいでしょうか」
「構わないわ」
「それと原稿執筆料と取材費ですが……」
内ポケットからメモ帳のようなものに、ペンで走り書きをしている。そして勢いよくちぎり、メモ帳を破き私に手渡した。
「小切手に私のサインを書いておきましたので、銀行に持っていけば換金してくれます」
私は受け取った小切手を見た。目が飛び出るというのはまさしくこんな感じなのだろう。無意識に目玉を大きく開き、書かれた数字を凝視した。見間違いではない……。さすがに気になってエーギンハルトに問いかけた。
「あの、ちょっと……」
「なんでしょうか」
「八百じゃなくて一千になってるんだけど……」
「ここに来るまでの交通費だと思ってください。わざわざこんな辺鄙なところまで来てくださったお礼も兼ねてです」
「う、うん。ありがたく頂戴しますわ」
私は持ってきたバックの中に入れてある財布の中に貰った小切手を大切にしまった。
「それで詳しい仕事の件ですが、オットーに渡してある紙に詳しく書いてあるので、御帰宅の際受け取ってください」
「ちょっと質問なんだけど、締め切りはいつなの」
「あまり細かく設けてはいませんが、三ヶ月後くらいで如何でしょう」
「そうね。大丈夫」
「会社の立ち上げが順調にいくかはまだ不明なので、またこちらに来ていただけないでしょうか」
「三ヶ月後。うん、わかったわ」
忘れないようにバックから取り出した手帳に記す。