13
「大きい……」
私は嘆息を混じらせながら呟いた。屋敷内は日の光が当たっていないからか、薄暗い。金持ちにありがちな、甲冑と巨大な絵画が飾られてあった。床には絨毯が敷かれてあって、一歩踏み出すと、飲み込まれてしまいそうな感覚に陥る。
するとパタパタと一人のメイドがラーラに近づき。耳打ちをした。「ちょっと用ができたわ。ロミルダ。ご主人様の元までお連れして」
「はい……」
ラーラはメイド長に軽く頭を下げた。
「申し訳ありませんが私は失礼させて頂きます。案内はロミルダに任せますので、これで失礼致します」
ラーラ―は深くお辞儀して素早く去って行った。
「……あの……、覚えておられませんか?」
「え?」
「いえ……。なんでも、ありません。ご主人様の元までお連れ致します」
ロミルダは一瞬目を伏せ、踵を返した。
「う、うん……」
私は首を傾げた。
もしかしてロミルダは私のことを知っているの?
人違いだろうか。だが、私が聞き返したとき一瞬ラーラの表情は暗い表情に変わった。
メイド服に袖を通した魔族の背中はどこか寂しそうに思えてならなかった。
「ロミルダ、さん。この屋敷はいくつくらいあるの」
「ロミルダで大丈夫です。調理室や寝室等を含めますと五十ほどかと」
「ここの屋敷内には魔族と妖精族、合計百二十人が済んでいるって聞いたけど、みんなどこに住んでいるの?」
「皆さん、屋敷内に住んでいる方もいらっしゃいますし。外で自分の家を建てて住んでいる方もいらっしゃいます」
――とロミルダは一つの部屋の前で歩みを止めた。
ロミルダはノックを数回してから、お客を連れてきたことを告げる。
「こちらにご主人様はいらっしゃいます」
「分かった」
私がドアを開けようとしたとき、「エミリア様」ロミルダはどこか意を決したかのように私に声をかけてきた。
「エミリアはもう昔の名前なの。その名前で呼ばないで」そう言おうとしたとき「あの……私は……どんなことがあってもあなたについてきます」
と深々と頭を下げ走り去ってしまった。