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駅に向かって歩いていると、ぞろぞろと県庁の職員の姿が見られるようになってきた。皆一定の動き、一定のスピードと歩幅で県庁を目指しているようにみえる。
クレージュ駅の出入り口から、紺色の制服を身にまとった男女が無表情で大量に出てくる様は、ある種滑稽すら思えた。何人か制服を着ていない人もいるが、それは稀だった。
逆に駅の構内に入っていく人は出ていく人に比べると少ない。三分の一ほどであろうか。
私は駅の改札を通り、売店で手早く軽い朝食を購入しミッドランドシティ行きの列車に乗り込んだ。列車には支持席だったこともあり、悠々と座ることができた。
ミッドランド行きの列車は別名『かもめ列車』と呼ばれている。南に向かう列車なこと、ミッドランドシティにはかもめが多いことから付けられた。
かもめ列車の中は他の線と比べ通勤や通学の乗客が多い。どこか殺伐とした空気の他の線と比べ、のどかな空気が流れているように思えた。
五才くらいの男の子が列車内で騒ぎ、男の子を叱っているお母さん。友人同士で何か楽しそうに話しをしている、大学生くらいの男の子達。友人同士なのか、はたまたは恋人同士なのか分からない若い男女たちもいる。私のように一人で列車に乗っている男性や女性も多い。各々が気のままにミッドランドシティに向かう時間を過ごしていた。
私は座席についている簡易テーブルを広げ、売店で朝食用に購入したサンドイッチを開封し、ミルクティーに口をつけた。
二つ目のたまごサンドを食していた時に列車は動き始めた。朝から動き回ったせいかサンドイッチを食べきってすぐに眠りに落ちてしまった。